只野、隊長達のお願い聞いて周るってよ 第二部隊隊長 巌ノ国 義重編 7
俺は彼の言葉に頭を悩ませるのだった。
ダンジョンに潜る際の安全マージンは幾らでもとっていいと個人的には思っている。
臆病者と揶揄されるかもしれないが、それで命を落としてはどうしようもないので何を言われようと構わない。
部隊員の命には代えられないのだ。
それに比べたら俺が何と言われようがどうだって良い。
出来れば無所属の者にもそこを意識して欲しいが何とも歯がゆいものである。
そもそも意識していたら行方不明者の捜索なんてそうそう起こらないか…。
「自らの実力を試したい君達の気持ちは分かる。監督として私が見ている限りダンジョンでの事故の確率は極めて低いが絶対ではない。この間の突発的なモンスターの発生然り、移動トラップ然りな。ダンジョンは何が起こるか分からない。学校でも部隊でも言われ続けている事だ。」
『…。』
俺の言葉に彼は静かに耳を傾けている。
「深くなる程イレギュラーに巻き込まれる危険性は高い。我々は日常的にダンジョンに潜るから忘れがちだが元来ダンジョンへの潜行は危険なものだ。初めてダンジョンに潜った時どんな気持ちだった?未知の場所へ向かう期待と興奮によるワクワクか?それとも恐怖か?どちらにせよ我々はダンジョンの最前線で動く組織だ。分かっているとは思うがその危険性はよく肝に銘じておくんだ。」
『…了解です。』
フルフェイスのマスクで表情は見えなかったが一応納得はしてくれたようだ。
今回参加したメンバーが無茶しないように見てもらうため、後で滝沢さんに言っておこう。
訓練を監督したのに無茶して亡くなったなんて聞いてしまったら申し訳なくなってしまう…。
一度隊員達の意識調査を実施するべきだろうか?
事故防止に一定の効果が有るかもしれない。
去っていく彼の背中を見ながらそんな事を思うのだった。




