元教え子 東 紅 15
ボロボロで、少しの力でも崩れそうなその扉を押し開いた。
中はがらんどうとしていて何も無い。
窓も家具もなく、ただの石材で作られた四角い部屋だ。
「クリア、気配通り何も居ないし、何も無い。」
「空き部屋ですか?でしたら一度ここに生存者を集めておくのはどうでしょう?」
彼女に提案されたが、それは頷き難い内容だ。
「いい案だが、今の最優先事項はここ一帯の安全確保だ、そちらは第二部隊に任せよう。見えない所に怪我をしてるかもしれないし、この部屋もずっと安全とは限らないから。」
少しでも生存者の安全を確保したいのだろう、目の前で倒れてる人がいるのだ。
だが、俺達にも任務がある。
今は下手に動かさない方がいい、第二部隊が来るなら尚のこと、人数の多い彼等に任せた方がいい。
彼女の言いたい事も分かる、しかし俺達二人で出来る事などたかが知れている。
ならば。
切り替えよう。
「俺達の任務を少しでも早く終わらせるぞ、その後第二部隊と合流し、生存者の救助活動に入る。」
「了解です!」
気配のない扉はとりあえず全スルー、迅速にモンスターを殲滅して安全確保、並びに行方不明者の捜索を完了させる。
第二部隊と合流した後、行方不明者を集めダンジョンから脱出だ。
帰りの露払いは俺と紅でこなし、第二部隊には隊と被害者の帰還を最優先させる。
そうすれば少しずつ運び出すよりは早く脱出出来るはずだ。
その際は、近づく気配にいつも以上に気を配らねば…。
「この先気配のある扉だけ確認する。第二部隊がここに入り次第連絡して情報を共有、生存者の状態確認と、回収をお願いして、いつでも脱出出来るように構えてもらう。行くぞ、付いてこい。」
「はい!了解です!」
彼女の返事を聞き、駆け出す。
2つ目の扉に気配はなく、3番目の扉に気配有り。
3番目の扉を蹴破り中へと突入した。




