只野、隊長達のお願い聞いて周るってよ 第二部隊隊長 巌ノ国 義重編
只野 優人の独白Ⅹ
心地よい眠りから目が覚める。
自分が寄りかかっている者に目を向けると、そこには白くてふかふかの毛の塊が鎮座している。
寝ているのか動かず穏やかな息使い。
何とものんびりとした様子に、起きたばかりなのにまた眠くなってきそうだ。
「おはようムーさん。今日もありがとうな。」
「メェーzzz」
俺の言葉に反応して人ひと鳴きしたが、すぐにまた眠ってしまったみたいだ。
彼?彼女?はいつの間にかここに来ていたフクすけ達の同類らしい。
全身が白くきれいなフワフワの毛におおわれて、頭には真珠の様にキレイな輝きのある小さな角が生えている。
毛量が多いからか寄りかかると身体が沈んで全身を包み込み、ダメになってしまいそうな錯覚に囚われてしまう。
普段は日当たりの良い所で日向ぼっこをして過ごしているのんびり屋さんだ。
俺が寝ようとするといつの間にか背後に現れて、寄りかかれと言わんばかりの無言の圧力を放ってくる。
俺はその圧力と寝心地の良さに抗えず、ここ最近は好意に甘えているといったところだ。
堅い地面や葉っぱを敷いただけの寝床だった俺、この寝心地を知ってしまった以上その心地よさを手放すのは難しい…。
頭上の木にフクすけがとまっているのが見える。
こちらの様子に気付いたのか、飛んできて肩にとまった。
「フクすけおはよう。」
「ホー。ユウトおはようホー。」
湖に向かいながら今日の事を話し合う。
狩りと採取のルート、修行と勉強のメニュー、拠点の設備。
今日1日の流れを確認しながら湖で顔を洗い果物で朝食を済ませ、湖の周りを散歩ついでに哨戒する。
朝のルーティンを終わらせると、森の中にある開けた広場に到着する。
広場の中央にはウサきちが佇んでおり、少し離れた所にゴリさんが仰向けで倒れている。
どうやら手合わせをしていたらしい。
「ホー。今日もコテンパンに負けたホー?いい加減力任せに戦うのをやめるホー。それにウサきちもやりすぎホー。」
「…ゥ…ホゥ…。」
「フンッ。」
「ホー。最近ユウトに勝てないのがそんなに不満ホー?」
「(# ゜Д゜)!!」
「ホー。口が過ぎたホー。怒らないで欲しいホー。」
ウサきちが今にも飛び掛かって来そうな様子で抗議の意思を表し、それをフクすけがたしなめる。
何とも平和な日常だ。
「ブルル。」
木々の間からエリザベスがこちらを見ているのが見えた。
俺の視線に気付くと首を動かして付いて来るよう意思表示をして体の向きを変える。
「なにかあったのか?」
「…。」
近付き声を掛けると神妙そうな表情で歩き出す。
俺は何も言わず付いて行く事にした。
付いて行った先には真っ黒な子犬が傷付き倒れていた。




