只野、隊長達のお願い聞いて周るってよ 第四第八部隊素材納品依頼 13
俺はその刃を書かれた線に沿わせ、甲殻の切り出しを始めた。
魔力に耐性があるとはいえ流石に許容値があるため、その値を越えた量、もしくは高質の魔力であればその防御も貫通することが出来る。
書かれた線に沿って切るだけなので切り分けの作業自体は然程時間はかからず終了した。
「魔力を高濃縮して作った刃でのカットでこの速さと断面のキレイさは流石としか言えないね!見事な仕事だよ!これだけキレイに切れてたら後の加工がやり易くて助かるよ!」
「それは良かった。第八部隊にはいつも世話になってるからな。少しは返せたか?」
切り出した甲殻を見ながら嬉しそうな様子の土倉に、冗談めかして問いかける。
彼女は一瞬間をおいて笑みを深めると頷き満足そうな表情になる。
「頭領に気を使ってもらえてるだけでアタシ達縁の下組は報われるんだ。そうだね、どうしてもって言うならいい素材や新しい素材を優先して回しておくれよ!」
「わかった。ついでに面白そうな素材も優先してもってくるよ。」
「いいね!俄然楽しそうじゃないか!」
そう言うと彼女は快活に笑い、甲殻を作業台の近くに移動させ始める。
俺も大き目の甲殻を何枚か持ち彼女に習い作業台の近くに持って行きここでいいかと確かめ、彼女が頷き合っている事を確認し床に降ろした。
「それじゃあ新しい子の発表会と行こうかね。」
「確か最近作っていたものはダンジョン内で従来よりも早く陣地展開を目的とした道具の開発だったな。」
「そうさ!少しでも早く準備が出来ればその分作業中のリスクが減るし、他の事に時間が使えるからね。多少はダンジョン内での活動が快適になるはずさ。」
「それは素晴らしいな、今から見るのが楽しみだ。」
全ての甲殻の断片を運び終えた俺達は工房を後にし、土倉の案内で使用試験中である中庭へと向かう。
気付けば先程の気まずさはいつの間にか無くなっていた。




