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只野、隊長達のお願い聞いて周るってよ 第四第八部隊素材納品依頼 12

俺は慎重に線を引く彼女を静かに見守った。



それから少し経ち、彼女は額の汗をぬぐいながら使っていた道具を元に合った場所に戻した。

俺はその間彼女を眺めていた訳だが一心不乱といった様子で凄い集中力だった。


「ふー。待たせて悪いね!取り敢えずこのサイズに切り分けて貰っていいかい?多少はずれても問題ないようにはしているけど、ぴったりだととても助かるよ。」


言われて改めてキングビートルの甲殻を見る。

黄金色の甲殻に幅1cm程の白い線がキレイに走っている。


甲殻にある繊維や魔力に体制のある方向も考えて計算したのであろう。

素材が提供されると分かった段階である程度使い方を決めてサイズを考えていただろうが、キングビートルは個体によってこの入り方が全然違う。


それをこの短時間で終わらせることが出来るのは流石職人といったところか…。

これだけ見ても彼女の技量の高さが伺い知れる。


「流石だな。この甲殻の強度を最大限発揮できるように印が付けられている。前に取り扱った事があったか?」

「久しぶりだけど何となく覚えてるもんさ。それに集中して見たら視えてくるものもあるのさ。感覚的なものだけどね。」


所謂職人の勘といったようなものだろう。

普通ならあんまり触っていない素材を感覚で扱うなと怒られそうなところだが、彼女の場合は下手に理論的にやらず、感覚でやった方が上手く行くため誰も何も言わない。


水藻(みなも)以外は…。

彼は理論と考察、事実と結果によって答えを導きものを作る科学者であり、そのため土倉(つちくら)とは話が合わずよく喧嘩をしている。


まぁお互いの実力は認め合っているので、俺からしたら仲良く喧嘩しなといった具合である。

何だかんだで技術協力もしているみたいなので、考えが違うだけで本当に仲が悪いという事も無いのだろう。


そんな事を考えながら俺は指先に魔力を集め小さなナイフのような形に形成する。

形が出来たらそれを凝縮し、高濃度の魔力の刃に仕立てていく。


甲殻の魔力耐性を貫通できる程の魔力で形成された魔力の刃が右手の人差し指に出来上がった。

俺はその刃を書かれた線に沿わせ、甲殻の切り出しを始めた。

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