只野、隊長達のお願い聞いて周るってよ 第四第八部隊素材納品依頼 3
これは嬉しい事だろう。
地方で頑張ってくれている部隊員と送られてくる感謝の頼りを思い出し頬が緩みそうになるのを堪える。
今の状況を考えるとそんな場合では無いので自重する。
「3回目は持続性のある組織作りをとの事でしたので、国内初の潜行者を育てるための教育機関を作り創設しました。これにより若くて才能のある潜行者の卵達を発見する事ができ、今年遂に初の卒業生を輩出する事ができました。これをもって私に課せられた任務は完了したと思われます。」
俺がそう言うと上司は眉間に皺を寄せ更に考えているようだ。
この状況あんまりいいことを言われない気がする。
「実は君にやってもらいたい事があってね。」
やっぱりか。
ここまで思った通りだと清々しさすら感じる。
「私もこんな事はしたくないのだがね、如何せんこの国は未だに復興途中だ。君のような優秀な人材がいなくなるのは正直困る。せめていなくなる前に出来る限りはやって行ってくれないかね?この国のため、いや国民のために。」
「…。」
そんな風に言うのは卑怯ではないだろうか。
国民を盾に取るような発言に不快感を感じ、それが表情に出そうなのを堪えて無表情を貫く。
「君の気持ちも良く分かる。しかし組織の者の信頼や国民のためだと思って、な?君も責任ある立場だ、分かるだろう?」
「…。」
「今回は取り敢えず聞かなかった事にしておくから、今日はもう休むといい。最近働き詰めだったみたいだからね。」
「…失礼します。」
「依頼は今度政府から君当てに連絡をするからよろしく頼むよ。」
俺は退職届を机に置いたまま上司の部屋を後にし本部を出る。
入口には1台の車が停まっていて、竜胆が車の後部座席のドアを開けてくれる。
「ありがとう。」
一言礼を述べ後部座席に乗り込むと、そのまま竜胆も隣に乗り込みドアを閉めると車が走り出す。
本部の敷地から少し離れた所で竜胆が話し始めた。
「その様子ですと今回も断られたようですね。」
「…そうだな。」
「義理を通すのも大切かもしれませんが、時には強引な手に出るのも一計ですよ。隊長は責任感がおありで、優しいのでそんな事なされないのでしょうが。」
「…そんな事ないさ。」
「この後は第四部隊と第八部隊の隊長から受けた素材納品の依頼を受ける予定です。少々移動時間がありますので少しかもしれませんがお休みください。」
「そうだなありがとう。お言葉に甘えるよ。」
どこから取り出したのか分からないが、竜胆からアイマスクを受け取り目に掛ける。
不思議と落ち着く暖かさを感じすぐに眠りに落ちた。




