只野、隊長達のお願い聞いて周るってよ 第三第六第七部隊隊長訓練編 5
扉の向こうからは未だに戦闘音が鳴り続けていた。
どれ程この訓練を続けていただろうか。
俺の目の前には座り込んで今にも倒れそうな様子の蜜園、うつ伏せに倒れピクリとも動かない月隠、仰向けで大の字に倒れ荒い息を吐く騎士道。
「大丈夫…では無さそうだな。」
「…ッ!…。」
三者三様の恰好で休憩?をして息を整えている様子。
俺の言葉に蜜園が何か言いたげに顔を上げたが疲れ故かすぐに元の状態に戻ってしまった。
「皆限界みたいだし今日はこれくらいにしておくか?」
「「「…。」」」
3人からの返事は無く、ただ荒い息遣いが聞こえてくるだけである。
それも仕方のない事だろう。
彼等は約8時間全力で俺に挑んできたのだ。
むしろよくやった方である。
「今日の夜に訓練で気付いた所を資料にまとめて送っておくから、余裕があったら次までに見ておいてくれ。」
「「「…。」」」
その言葉には反応したのか3人が僅かに体を震わせる。
俺は腰のポーチから小さな赤い果実を取り出すと3人の元に向かう。
ナンテンの実に似た小さな果実はダンジョンで採れる物で、巷では若返りの実、医者殺し、始皇帝の求めた不老不死の薬の材料、〇豆何て言われているらしい。
限られたダンジョンの深層の中でも深い方でしか入手できない果実なので、それなりに貴重なんだなとは思うがそこまで言われる物かと言うと俺は何とも言えない。
効果は疲労回復、体力増強のようなポピュラーなものから始まり、細胞の再活性化やあらゆる病気への耐性、認知機能の向上等の効果も確認されている。
本当か?と思わないでもないが、この実1粒に懸けられた値段とお偉方が血眼になって求め探している所を見るにあながち間違ってないのではないだろうか。
「ほら、取り敢えずこれ食っとけ。多少はマシになるだろ。」
座り込んだ蜜園に木の実を差し出すが、顔を上げる元気も無いらしく俯いたままだ。
しょうがないので顎を掴み顔を上げさせ、開いた口に木の実を潰して入れる。
「ッ!?ッッ!!」
驚愕の表情で暴れだすが、口を塞ぎちゃんと飲み込ませる。
気付けの為か何なのかこの木の実、かなり独特な味をしている。
というかまずい、苦くてかなり酸っぱいというとんでもない味だ。
そのためかダンジョンのモンスターもこの実は食べない。
飲み込んだことを確認し手を放す。
蜜園はそのまま横に倒れ痙攣し始めてしまった。
疲れていたのに暴れたせいで体力を使い切ったのだろう。
今は寝かせておいてやろう。
2人にも食べさせようと視線を2人の方に送る。
真っ青な顔に絶望の表情を浮かべ、体を小刻みに震わせながらこちらを見ていた。




