只野、隊長達のお願い聞いて周るってよ 第三第六第七部隊隊長訓練編 3 ※第三者視点
現状は3人掛かりでやっと均衡している様に見えた。
只野から魔力が溢れてくる。
蜜園は咄嗟に自らの得物を手放し素早く後ろに下がる。
「何!?」
「何やってんのよ!?」
騎士道も下がろうとしたようだが、前に出した大楯がびくともせずに下がれない様子。
その判断ミスをフォローしようと蜜園が盾を構え再び前に出る。
「盾なら掴まれないと思ったか?」
「俺の盾の表面には掴める所は無かったはずなんだが…。」
「認識の違いというやつだな。」
何故騎士道が下がれなかったのか、それは只野が大楯に指を無理矢理食い込ませ掴んでいたからだった。
只野は一瞥する事も無く指の動きだけで斧を投げ返し蜜園を牽制し、足を止めさせる。
「普通やらないだろう?」
「常識に囚われたらダンジョンでは命取りになる事もある。」
「ははっ、それは間違いない。」
「つまりそう言う事だ。衝撃に備えろ。」
「優し目に頼むよ。ぐっ!」
次の瞬間には騎士道は吹き飛ばされ、大楯ごと壁に叩きつけられた。
「はぁ、ったく。あの脳筋何やってんのよ。頑丈だからって考えなしにも程があるでしょ。」
本日何度目かの光景に、蜜園が溜息を吐きながら苦言を呈する。
「騎士道の勇敢さは部隊の者にもいい影響を与えている。ましてや救護を担う第七部隊だ。助けられる側も頼もしいと思うはずさ。」
「最初はそうかもしれないけど考えなしなのがバレたら逆効果じゃない。」
「蜜園は手厳しいな。」
「アンタらが優しすぎんのよ。」
自らの足元に刺さった斧を引き抜き、蜜園は呆れた様子で頭を振った。
この会話は時間稼ぎで、天井からナイフを構え急降下で攻撃する月隠から意識を逸らすのが狙いだった。
「残念だが視えてるぞ。」
「…ッ!」
上空からの攻撃に反応し拳を振り上げる。
月隠は何とか反応し体を捻って攻撃を回避すると、反撃は難しいと判断したのか再び離れて気配を隠す。
「今のにも反応出来るって…。やっぱアンタ変態よ変態。」
「その言い方は何とかならないか?」
「それ以外の表現方法は持ち合わせてないわ。」
「…少し大人げない事をしてしまいそうだ。」
只野の魔力が静かに漂い出した。




