只野、隊長達のお願い聞いて周るってよ 第三第六第七部隊隊長訓練編
只野 優人の独白Ⅷ
静かな湖畔に戦闘の音が響き、大きな衝撃音と共に大きな木を揺らす。
その音の正体は俺で、大木に背中をしたたかに打ち付けていた。
「ガハッ…。」
大きな衝撃により肺から強制的に空気が漏れる。
視線を上げるとそこにはこの攻撃を繰り出した犯人である桃色の宝石を額に生やしたウサギが二足で立ち、シャドーボクシングをしながらこちらを見ている。
「ホー。最初に比べると随分と良くなったホが、まだまだ荒いホー。」
「ガメー。」
息を整え立ち上がり、声のした方を見る。
甲羅からクリスタルの生えた亀と、その上にモノクルを掛けたふくろうが乗っていた。
「魔力を空中に展開して足場にするなんて思わなかったよ。今回はなかなかいい勝負してたと思ったんだけどな。」
「ホー。魔力を扱う年季が違うホー。そんな簡単にはやられないホー。」
「ガメー。」
「何で君たちが自慢げなんだよ…。」
胸を張り自慢げなふくろうと、得意げに頷く亀。
実際そうなんだろうけどさ…。
この亀は俺がここ数日修業を付けて貰っている間、新たに馬が連れて来た。
知った仲らしく特にふくろうと一緒にいる事が多い。
ゾウガメほどの大きさで、亀らしくのんびりとしていて良く日向ぼっこしている。
思考を逸らしたのを察したのかウサギが足で地面を叩き注意してくる。
「ごめんごめん。続きをしようか。」
姿勢を正し構えをとると、ウサギは一息の間に間合いを詰めて一撃を繰り出してくる。
明らかに魔力の籠った強力な一撃、こちらも腕に魔力を纏い正面から受けないように角度を付け受け流す。
それでもかなりの衝撃が腕に響く。
一撃を受けたからと油断せず構え、息をする暇も無い連撃を見極め受け、流し、回避を選択し致命的な一撃を受けないようにしつつ反撃の機を狙う。
「そこっ!」
「!!」
「くぅ!」
紙一重の一瞬の隙を突き、カウンターの要領で拳を突き出すも体を軽く逸らすだけで回避されてしまった。
間髪入れずにまたラッシュが始まり、俺は回避行動に移される。
「ホー。これなら彼奴等との合流に間に合いそうだホー。」
「ガメー。」
「ヒヒン。」
こちらは必死だというのにいつの間に来たのだろうか。
白馬の彼?も合流して何とも呑気なやり取りをしている。
この後もひたすら戦い修業して暗くなったらふくろうと魔力の勉強をし食事をして眠る。
これが最近の俺の一日の流れになっていた。
昼間はウサギと実践形式で戦い、夜はそれを踏まえてふくろうと魔力の勉強をする。
ここ数日で俺自身がはっきりと強くなっている事を実感していた。




