只野、隊長達のお願い聞いて周るってよ 第五部隊隊長 白金 瑠璃華編 19 ※第三者視点
膨大な魔力が乱れもせず、整然とした美しさで彼の身体に纏われている事が。
シーサーペントは困惑していた。
彼?は生れ落ちてからこんな感情になったのは初めてだった。
最初は住処をうろつく魔力に腹が立ち、排除しようと動いた。
見てみたらどうだろうか。
目の前には自分よりも矮小で魔力も感じない存在がいただけだと気付き、シーサーペントはさらに怒った。
この程度の存在に自分のテリトリーを侵されたのかと。
だがその認識はすぐに覆された。
放った水砲は返され屈辱を感じ、尾による一撃は受け止められた。
一撃を受け止められる直前に感じた膨大な魔力の奔流。
シーサーペントの本能が警鐘を鳴らす。
目の前の小さな生き物は危険だと。
それも過去に出会った事の無い程に。
只野が受け止めた尻尾をしっかりと掴み力を込める。
虹色の魔力が体に纏わり付き輝いて見える。
次の瞬間にはシーサーペントの巨体は宙を舞っていた。
只野が上空へ投げ飛ばしたのだ。
現実離れした光景に撮影班はおろか白金も息を飲み、自らの目を疑った。
泳ぐための機能が洗練された体には勿論宙を舞う能力は無い。
その下には待ち受けるかのように只野が拳を構えて待っている。
シーサーペントは足掻く様に水と毒の雨を降らせるが、全く意に返さず真っ直ぐに獲物を見据える。
右手の拳に魔力が集う。
集まった魔力が螺旋を描き円錐を形作る。
その溜めの余波だけでシーサーペントが放った雨は掻き消されていく。
それは穿つもの、すべてを貫き通すもの。
込められた魔力は尚も増え、より速く回転し先端は細く鋭くなっていく。
自らの攻撃が効かないと理解したのか、シーサーペントは攻撃を止め、魔力を纏い防御態勢に入る。
視えない者でも視認できるそれは、堅い鱗も合わさり普通であれば誰も傷つける事の叶わない鉄壁の守りのはずだった。
地面が近づく。
「はぁっ!」
「Giyaooooo!」
只野が拳を突き出したと同時に魔力同士がぶつかり合う。
結果は呆気なく決まる。
一瞬の拮抗の後、ガラスが割れる様な音と共に防御が砕け、その身に螺旋を受けたシーサーペントはその巨体に大きな風穴を穿かれた。
計算なのか偶然か、大量の血と肉が水辺の方に飛散していく。
只野が孔から跳んで出てくるが、相当きれいに穿ち飛ばしたらしい。
身につけた物には血液ひとつも付いていなかった。




