元教え子 東 紅 12
そう思い、俺はホールへの扉へ足を向けた。
扉を戻りホールに出ると紅がホールで待機していた。
スラリと背が高く、容姿端麗、ボディースーツに上着を羽織るダンジョン探索部隊の基本装備だというのに
、その立ち姿だけでも絵になってしまっている。
心の中で称賛し、声には出さない様に気を付ける、時代のリスクマネージメントだ。
彼女も気付いたのか、引き締めた表情を少しだけ崩し、此方へ寄って来た。
「期待の新人に雑務をさせて済まないな。第二部隊には連絡は付いたか?」
「はい、一度探索を打ち切り、ダンジョンに潜っている部隊全てを此方に向かわせるそうです。目印の発光布も設置しておきました。」
「報告ご苦労、発光布の設置も感謝する。入ってきた時に分かっているかと思うが、左の方に生存者有り。ホール奥の扉の先には擬態型のモンスターがいただけで、生存者も遺体も無かった。」
労いの言葉と、彼女が居ない間に探索した結果を端的に報告する。
「情報共有ありがとうございます。遺体がないのは幸いですね、今のところは。」
「そうだな、今のところは。所で行方不明者の正確な人数は把握できたか?」
その問いに彼女は残念そうな表情で答えた。
「まだです、そこに関しては第二部隊も把握していませんでした。」
「そうか…。」
「少なくとも8グループが行方不明になってる模様です。」
「このご時世にか?あまり聞きたく無かったな。当時の管理者は何をしていたんだ?まて、今少なくともと言ったか?」
「はい、どうやら第二部隊のダンジョン管理の部署に圧力がかかっていた様ですね。正規に手続きしていない者達もいるかもしれないとのことです。」
「先程の数は?」
「正規に手続きした者達の数です。」
今俺はきっと苦虫を噛み潰したような表情をしているだろう。
彼女も頭が痛そうだ。
「懲戒処分ものだな。」
「えぇ、間違いないかと。」
片手で顔を覆いそう言うと、彼女も頷き同意した。




