只野、隊長達のお願い聞いて周るってよ 第五部隊隊長 白金 瑠璃華編 10
こうして俺は発見したアイアンビートルと対峙するのだった。
洞窟に潜って来たのになぜか射す光に反射して緑に輝く甲殻がきれいだなと、呑気に考えていたらこちらに気付いたのか関節を鳴らしてこちらに振り返るアイアンビートル。
赤い相貌がこちらを捉える。
虫の無機質な目故に感情は伺えないが縄張りへの侵入者に怒りの感情を抱いているのか、大きな角の生えた頭を振り回し威嚇している。
俺は静かに手の平に魔力を溜めその魔力を凝縮し固める。
固めて今にもはち切れそうな魔力の塊が出来た時、アイアンビートルは力を込めこちらに突進してくる瞬間だった。
時速80㎞といったところだろうか、強靭な筋肉が驚異的な瞬発力を発揮し巨大な質量を一気に前へ押し出し、自慢の角で獲物を貫くアイアンビートルの必殺技だ。
俺は飛んで躱し、その大きな背中に飛び移る。
回避されたことに気付いたのか周りをキョロキョロと見回している姿は少し滑稽ではある。
その隙に甲殻の隙間から先程の魔力を滑り込ませ体内に打ち込む。
俺の制御下から離れた魔力は形を維持できず、アイアンビートルの体内で解放され膨張し暴れ狂う。
ビクリと身じろぎしたかと思うと、次の瞬間には比較的やわらかい腹側から乾いたような破裂音が鳴り、アイアンビートルは自身の肉片と緑色の体液を周囲にまき散らし息絶えた。
甲殻は固く頑丈な為、罅が入った程度で済んだので素材としての利用価値は十分あるだろう。
「こんな感じでどうだ?」
「とても素晴らしいですわ!緻密な魔力操作に完璧な魔力制御!魔力を使って戦う者として敬服に値するものを見せてもらいましたわ!ただ結構なグロ映像でしたので、動画には使えませんわ!」
「そうなのか…。」
「ただ映像自体は保存させていただきますわ!新人研修や潜行者試験での参考映像としてや、今後の研究の資料として利用出来そうですわ!」
「ああ、今回撮った動画は変な事に使わなければ好きに使ってくれて構わないよ。」
「参考になるのか?あれ…。」
「いやふつう無理だろ…。」
「只野隊長がモンスターと戦ってる所を生で見るの初めてですけどめちゃくちゃですね…。」
動画って難しいんだな。
同行している動画班の囁きを聞きながらそう思った。




