只野、隊長達のお願い聞いて周るってよ 第五部隊隊長 白金 瑠璃華編 9
運がいい事に撮影準備が整ったその瞬間に目的のモンスターを発見した。
最初の目的のモンスターであるアイアンビートル。
金属質の堅い外殻とそれを支える筋力をもち、下手な攻撃や魔法は一切受け付けない。
外見は軽トラ程の大きさ、緑色の体色と角が3本のカブトムシに似た容貌で、一部の潜行者(主に男性)から高い人気を博している。
その強靭な外殻は熟練の加工屋でないと加工は難しいが、その難易度に見合った性能をしていて、潜行者の盾や鎧といった防具での利用価値が高く、とても人気がある素材だ。
前衛でタンクの役割を持つ潜行者達の中ではアイアンビートルの装備を身に着ける事は一種のステータスになるほどで、入手難易度と加工の難しさからかなりの値段になるが色々な装備製造企業がこぞって欲しがっている。
主な攻撃はその質量を生かした突進攻撃で、その威力はコンクリート程の硬さのある言霊による障壁を易々と突き破る程だ。
「これは幸先がいいな。」
「ええ、それにまだこちらに気が付いてないみたいですわ。撮影班の準備も出来てますわ!」
白金に言われチラリと撮影班の方を見る。
カメラマン、カメラアシスタント、ドローン操縦士、照明係、そして機材をメンテナンスする技術者の5人のメンバーが笑顔でサムズアップを返してきた。
白金の言う通り準備は万全の様で、そうであるのなら待つ必要も無いだろう。
視線をアイアンビートに向けると、まだこちらに気付いてない様で林の中を木々をなぎ倒しながら我が物顔で闊歩している。
「何か注文はあるか?」
隣にいる白金に問いかける。
白地に金の刺繡の入った彼女専用のボディースーツに身を包み、薄い蒼のレディースジャケットを羽織って、花にレースをあしらったデザインの銀細工かの様な輝きを放つ緻密な作りのアイマスクを付けた彼女は何ともミステリアスな雰囲気だ。
撮影班とのやり取りをした今の一瞬で付けたらしい。
これは彼女の動画スタイルの為何も言わないがなんというか…似合ってはいるからいいか…。
「美麗な動画は過去の物がたくさんありますので、とにかく分かりやすく派手にお願いしますわ!」
「安心しろ、美麗な戦い方は俺には狙っても出来ん。しかし困った。俺は自力では属性魔法は使えないから派手さに少々欠けるな…。」
「その時は良いのが撮れるまでやり直せばいいのですわ!取り敢えず戦ってみて下さいまし。」
「了解。やれるだけやってみるよ。」
取り敢えず流れに任せて討伐してみよう。
こうして俺は発見したアイアンビートルと対峙するのだった。




