元教え子 東 紅 11
俺は付近にモンスターの気配が無くなったのを確認して、次に行くべくホールの方へ戻った。
先ほどの場所に目的の人物は見つけられなかった。
扉の前にいた人達同様、意識はないが命に別状は無かったので、後程来るであろう第二部隊に任せることにして、俺はホール正面の扉を開ける。
扉を開けるとその先は中庭になっていて、庭の真ん中には枯れた噴水が佇んでいる。
最初の扉を潜った時に感じた複数の大きな気配、1体はあの大き目の鎧騎士。
目の前の噴水からも1つ大きな気配を感じる、俺が気付いてないと思っているのか、動きはない。
擬態型のモンスターのアドバンテージは相手の不意を突いてダメージを与え、自分有利に戦いを進める事。
今回の様に相手に気付かれていたら殆んど意味がない、むしろ絶好の先制攻撃の機会である。
相手からの反撃のリスクを避けるために、今回も一撃で倒すことにする。
魔力を一瞬で発して圧縮、右拳に纏わせて飛び上がり、中心に向けて振り落とす。
轟音が鳴り響き、噴水と地面を割り、砂煙が立ち込める。
石材や地面とは違う何かを砕く感覚と共に感じていた気配が消える。
しっかりと一撃で仕留めきれたらしい。
腕を払って風を起こし、砂煙を晴らすとそこには手の平サイズの魔力結晶が落ちていた。
周りを見渡して見るが遺体は見当たらない。
この部屋から人の気配を感じなかったので懸念していたが、杞憂だったようで少し安心した。
安堵の息を吐きつつ壁沿いに目をやるが、入ってきた扉以外に扉は見当たらない。
結晶を拾いつつ気配を探ると、紅が戻って来たようで、ホールの方に気配を感じた。
ここにいてもしょうがないので、ホールに戻り紅と合流しつつ、残りの場所の安全確保も済ませてしまおう。
そう思い、俺はホールへの扉へ足を向けた。




