只野、隊長達のお願い聞いて周るってよ 第五部隊隊長 白金 瑠璃華編 4
俺の言葉に満足したのか、白金は嬉しそうに微笑んだ。
もう一口紅茶を飲みホッと一息つく。
雑味が無く、心地よくもハッキリとした渋みと奥行きのある甘味、ダージリンの様なフルーティな香りはそんなに詳しくない俺でもいい茶葉を丁寧に淹れた一杯だと言う事がわかる。
砂糖やミルクを入れるか問われたがとんでもない。
他の全てが雑味になるのではと思うくらいの素晴らしい完成度だ。
「最高のおもてなしだ、ありがとう。早速だが本題に入ってもいいか?」
「そう言っていただけて大変恐縮ですわ。こちらのお菓子もどうぞ召し上がれですわ。」
「…いただこう。」
忙しい第五部隊の事情で話に入らないとは、相当食べて欲しいのかというお花畑の思考はしていない。
おそらくなにかしらを待っているのだろう。
俺に合わせたい人か見せたい物があるためその準備の為の時間稼ぎか、それともなにかのタイミングを待っているのか。
単純にもてなしたいというのもあるかもしれないが、俺が話を切り出そうとした時に一瞬緊張した様子があった為少なくとも何かしらはある事だろう。
どちらにせよ白金は時間が欲しい様子。
彼女も忙しい中時間を作ってくれているのだ、待つくらいなんてことはない。
ケーキスタンドの下段にあるサンドイッチを手に取り一口頬張る。
全粒粉パンにスモークサーモンとクリームチーズを使ったサンドイッチで、スモーキーな香りを感じながらもほのかに香るディルの爽やかな香りで後味の良い仕上がりになってる。
端的に言うとかなり美味い。
スモークの香りに負けないサーモンのうま味(おそらくダンジョン産の物)クリームチーズのコク、それらを引き立たせてつつも落ち着かせるディルの香り。
サンドイッチというシンプルで誤魔化しの効かない料理において、食材が良いとは言えそれだけではここまで美味くならないだろう。
計算され尽くした完璧なバランス、このサンドイッチ1つでこの製作者がかなりの腕前である事が伺える。
「いかがですか?」
味わう事に夢中で止まってしまっていた俺に白金が問いかけてきた。
心配そうな表情の彼女に声を掛けられハッと我に返り咄嗟に言葉を返す。
「すまない、あまりの美味しさに夢中になっていた。第五部隊は素晴らしいシェフと知り合いなんだな。良ければ紹介して欲しいくらいだよ。」
「フフフ、お口に合った様で嬉しいですわ。その内紹介いたしますわね。」
「ああ、是非頼むよ。」
安心したのか嬉しそうな様子の彼女と共にもうひと時ティータイムを楽しむことにした。




