只野、隊長達のお願い聞いて周るってよ 第五部隊隊長 白金 瑠璃華編 1
代表者対抗戦が終わり数日。
世間は未だに興奮冷めやらぬといった雰囲気を醸し、潜行者になるための教育機関は入学希望の電話が鳴り止まない状況らしい。
こんな時代だ、誰しも強さが欲しいのだろう。
今まで動画やネットでの情報収集だけでは集まらなかったであろう濃い情報。
対抗戦の模擬形式とはいえその一端に触れたからだろうか、もしかしたら俺も私もといった考えを持つものは少なくはないだろう。
「ふー。取り敢えず当面の書類は片付いたな。」
「お疲れ様です隊長。では本日より開始されますか?」
「あぁ、少し休憩したら早速取り掛かる事にしよう。」
現在時刻13:30背もたれに身を任せ天井を仰ぐ。
机の上の書類はいつの間にか片付けられ、竜胆の淹れてくれたコーヒーが乗っている。
「ありがとう。今日もいい美味いよ。」
「どういたしまして。それではどちらの方から受けられますか。各隊長からの要望はこちらになります。」
「そうだな…。」
竜胆の差し出してきた書類の束7つ。
勿論各隊長からの要望書だ。
事は新宿ダンジョンでの救出作戦後の緊急会議まで遡る。
その際緘口令の発令と諸々の事情により、交換条件として俺が皆に提示したものだ。
こんなもの無くても皆なら聞き入れてくれたかもしれないが、此方のお願いの一方的な押し付けでは申し訳なさがあるため出してもらった次第のものだ。
彼等彼女等の事だ相当無茶な事は言わないだろう、言わないよな?
面子のハチャメチャさに少し不安になるがそこは信頼する事にしよう。
本当に頼むぞ。
出された書類に目を通す。
達筆な文字で手書きされて短くまとめられているもの、数ページで資料の様にキレイにまとめられているもの、小冊子のように本格的なもの等様々で、とても個性的な物が揃っている。
その中の1つ、小冊子のようにまとめられたものを手に取る。
表紙には「動画サイトやSNSでの広告発信拡大の為の計画書」と書かれ、製作者の欄には白金 瑠璃華の名前が書かれている。
「そちらになさいますか?」
竜胆に言われ、最近の若者の中での自分の存在について考える。
曰く教科書に名前だけ出てくる偉人の様な存在、顔写真が無くどんな人相か分からないといったものらしい。
これは教科書を作っている所に一言言いに行っていいのでは?とも思ったが既に部下の何人かは出版元に話をしに行ったらしく、それならば別にいいかといった所。
それはそれとして自分でも動かなくてはな。
「そうだな。思うところもあるし、まずはこれから行くとするよ。」
「では連絡は私の方からしておきますので、隊長は彼女の元へ向かって下さい。後片付けは私がやっておきます。」
「ありがとう。助かるよ。じゃあ後はよろしくな。」
「はい、お任せ下さい。」
俺は竜胆に礼を言い立ち上がると、1度伸びをして白金の部隊のいる部署へと向かうのだった。




