ダンジョン潜行者組織代表対抗戦 52
蜜園は倒れそうな彼を片手で支えるとゆっくりと地面に寝かせた。
第二試合も無事勝利に終わり一安心だ。
彼等彼女等の実力的に負ける事は無いと分かっているのだが如何せん対人戦は何が起こるか分からない。
相性によっては負けてしまうのではないかと心配していたのだが、それは杞憂だったみたいで安心した。
この様子なら他の皆も前よりも実力を伸ばしている事だろう。
俺もうかうかしてられないな。
今まで以上に気を引き締めて過ごさなくては。
さて蜜園の能力だが盾と方手斧の見た目の結晶装備とあの戦い方でバッファーが主な役目である。
いつもは歌で味方の指揮と能力を底上げする事が仕事なのだが、彼女は自分自身にもバフを掛けることができ、魔力による身体強化も合わせて人間離れした身体能力を発揮する事が出来る。
結晶装備の《誰が為の軍歌》はあの見た目で武器としての性能は異常な頑丈さしか無く、能力はバフ効果の向上しかない。
しかしその向上効果が似たような性能のものとは比べ物にならない程高く、百合曰く本人と結晶装備の相性が極めて良いらしい。
潜行者と結晶装備の相性は目下研究対象なようで、色々な研究者が日夜その解明に勤しんでいるらしい。
今の所は長く使う、共に強敵を倒す、しっかりとメンテをするなど様々な憶測が飛び交っている状況だという。
バッファーなのに前衛でガンガンに戦う姿からよく部下の隊員からあまり前に出ないで欲しいと言われるようだが、彼女の性格的に無理な話だろう(俺の所に相談しに来た隊員もいた)。
自分に掛ける場合は器用に出力を調整できるらしく、この試合中も彼女の動きに合わせて魔力が動いていたので何とも器用な事である。
「勝利おめでとう。余裕そうだな。」
「ふんっ、当然じゃない。この程度の相手なら半分寝てても勝てるわよ。」
「それは心強いな。取り敢えずお疲れ様。ゆっくり休んでいてくれ。」
「言われなくてもそうするわよ。あっ、支給品のエナジーバーが無くなったからあったら貰っていい?」
「ああ、竜胆が用意してると思うから彼女から受け取ってくれ。」
「そ、ありがと。」
それだけ言うと彼女は控室の方へ向かって行った。




