ダンジョン潜行者組織代表対抗戦 47 蜂谷vs一回戦11位チーム ※三人称
それを見た審判が合図を出し第一試合の戦いの火蓋が切られた。
蜂谷が両手に展開したナックルダスターには円錐型で5cm程の3本の棘が付いていて、黄色と黒の警戒色に手首部分には白色のフワフワとした装飾で包まれている。
それを装備し半身で構え、重心を動かす華麗なフットワークで距離を詰める準備をしているようだ。
「楯、志奈気を付けろ。明らかに毒系の能力だ。」
「ああ、こんなの見れば分かるぜ。喰らわなけりゃどうってことねぇよ。」
「ええ、あの棘に注意しながら気を散らせるわ。言ってくれた割に大した事なさそうね。」
「そうだな、細川俺達3人で足止めするから気を狙って遠距離攻撃で仕留めてくれ。都杖は万が一毒になった奴が出たら治癒を頼む」
前衛の3人が話し合い戦いの流れを決める。
後衛の2人は頷き指示に従う様子だ。
「ねぇねぇ準備まだ終わらないの~。待ってあげるのも退屈なんだけど~。」
慎重な相手に対し蜂谷は緊張感の欠片も無く退屈そうにしている。
「ちっ、なめやがって。おい!何時も通り俺が前で壁になって引き付ける。」
「頼んだ楯。俺も接近して隙を見て攻撃する。」
「私は回り込んでみるわ。」
前衛の3人が声を掛け合いそれぞれ動き出す。
後衛の2人はそれぞれの杖を構えいつでも言霊を発動できるように構えている。
「オラァ!そんなリーチの無い装備で5対1とかなめんなよ!俺1人で十分なくらいだ!”大楯の突撃”!」
大楯を持った男が弾き飛ばそうと大楯を前方に構え言霊を発動し全力で突進する。
ギルド連盟でもそれなりに実力のあるチームの彼の突進は並みのモンスターであれば簡単に轢殺する事も出来る。
蜂谷は自身に迫る金属の盾による突撃を見ても何も脅威を感じないのか、その場から動かずただじっとその様子を見ている。
そして手を伸ばせば触れられる、それほどに距離が近づいた時に蜂谷は動き出した。
突撃してくる大楯の右縁を掴みひらりと飛び上がり回避。
あまりにも軽快な動きに大楯の男は一瞬彼女を見失った程だ。
「おじさん遅すぎ~。えいっ。」
すれ違いざまに空中からの一撃。
足場も安定していなく腰も入っていないその一撃は大したダメージにはならないが、毒が仕込まれていると思い込んでいる相手は慌てだす。
「まずい!楯に解毒を!何やってんだ!1人で前に出過ぎだ!」
「大丈夫だよ~。毒なんて使わないから~。てか試合で殺す可能性のある毒なんて普通使わなくない?」
「…確かに。」
「そこは素直なんだw」
場に何とも言えない空気が流れた。




