ダンジョン潜行者組織代表対抗戦 35
頼むからこの状況で土倉を呼んでくるんじゃないぞ…。
取り敢えず取り押さえてる部隊員が大変そうなので水藻を先にどうにかする事にする。
月隠はまだ自制が効く方なので後程で大丈夫だろう。
一応公務員なんだが何でこうも癖が強いというか何と言うか…まぁ集めたのは俺なんだが…。
こんなんだが根っこの部分では悪い奴等ではない。
要請にはしっかり応えてくれるし何より皆優秀だ。
時折暴走する事はあり頭を悩ませるが、その程度ならまだお釣りが来る。
実力も折り紙つきだ。
これ程の戦力が文句も言わず所属してくれていること自体が奇跡と言っていいだろう。
皆所属してもらう際に一悶着あったが最終的には今のこの形で落ち着いたので良かった。
水藻も随分と丸くなったものだ…。
昔の水藻なら今頃殺しはしなくても怪我人が大量に出ていたに違いない。
それほど彼の人間嫌いは酷いもので、当時は相当に荒んでいた。
適合者である彼があの時受けた仕打ちを考えればそれも仕方のない事だとは思う。
恐らくではあるが、覚醒者として目覚めていなかったら今頃彼はここにいなかっただろう。
普通の人間では死んでいた。
それほどの仕打ちを彼は過去に受けているのだ。
そう思うとよくここまで更生出来たと思う。
これも癖の強いメンバーのおかげだろうか?
つい昔を思い出し懐かしさと彼の成長を感じ感慨深い気持ちになる。
そんな事を思っている間にももつれている3人に近付く。
正面から俺が近付いて来るのが分かったからか、少し経って冷静になったからか。
少しだけ落ち着きを取り戻したかのように見えるが、その表情は少し青ざめている様に見える。
彼だけでなく残りの2人もこちらを見て固まり顔を青ざめさせている。
はて?何かその様な原因はあっただろうか?
「いやはや、貴方のお怒りは十分理解はしますがねぇ。この状況でその笑顔は怖すぎますねぇ。」
「何?」
水藻に言われ抑えている2人を見る。
視線の意図に気付いたのか、揃って無言で首を何度も縦に振る。
どうやら水藻の成長が嬉しくて微笑んでいたのが怒りに因るものだと思われたらしい。
解せぬ…。
確かに笑顔には相手を威圧する側面もあるがまさかこの場面でそう捉えられるとは…。
俺は何とも言えない気持ちで片手で額を抑える。
背後からは蜂谷の笑い声が聞こえていた。




