元教え子 東 紅 8
そのモンスターは物陰から飛び出して襲い掛かってきた。
「キィぇぇぁぃぃエェエァァアァ!!!」
飛び出したそれは、その瞬間に狂ったような叫び声を上げて手に持った鉈を振り回して来た。
青い皮膚に顔が見えないほどの長い髪、独特の叫び声。
危険度Ⅱのモンスター、バンシーである。
個体自体の強さは大した事ないが、危険度にしては高い気配遮断能力を有し、持ってる武器でも事故率が変わり、その叫びも自分より弱い者なら強制気絶、格上でも精神耐性がないと気絶しかけるという、厄介なモンスターだ。
幸いな事に、紅は卒業時点で位Ⅲになっており。
その精神耐性は卒業生の中でもトップクラスである。
現に全く意に介さず前に出て、バンシーの攻撃を捌いている。
「気をつけろ、バンシーの叫びは攻撃だけじゃない。仲間と連絡を取る際にも使われるからな。」
「承知してます。この程度、何体来ようと先生のお手を煩わせる事はありません。」
話しながらも気配を探る、大きな気配は動かないが、此方に幾つかの気配が近づいて来てるのが分かる。
「何体か近づいてきている、俺が迎撃するからその間に仕留めてくれ。」
「いえ、もう終わります。」
言うが早いか、彼女の持った剣が鋭い線を描きバンシーの鉈を持った手を切り飛ばし、返す刃でその首を刎ねた。
「来る位置は分かってるか?」
「すいません、戦闘に集中していたので…。」
「階段の上の方から1体、ホール奥の扉の先から2体、左の奥の通路から2体だ。結晶装備を使え。」
「そんなにっ…。了解しました!」
指示通り結晶装備を展開したのだろう。
赤い光が迸り、彼女の姿が変わる。
紅と白を基調にした全身鎧、左手に炎を纏ったフランベルジュ、右手には炎を象ったショートシールド。
炎の戦士が光の中から現れた。




