ダンジョン潜行者組織代表対抗戦 23
俺は周囲に魔力と気配が無いことを確認した後、少女の安否を確認するために振り返った。
少女は何が起こったのか理解していないのか驚きからか、口を大きく開けて呆然と立ち尽くしていた。
俺は見える範囲に怪我をしていないか確認し声を掛ける。
「さっき振りだな。大丈夫か?怪我はしてないか?」
「はへ?」
少女は素っ頓狂な声を出すと、腰が抜けたのか尻もちをついて座り込んでしまった。
少しして理解が追い付いてきたのか荒い呼吸を繰り返し涙目になっている。
「わ、私、生きて、る?」
「俺から見たら足はある様に見えるが?」
「っ!?す、すいません!先程に続き助けていただきありがとうございます!」
どうやら意識が現実に戻って来たようだ。
俺に気付き飛び跳ねる様に立ち上がったがまだ腰が抜けているらしく、壁に背を預けペタリとまた座り込んでしまった。
「す、すいません。腰が抜けてしまったみたいで…。」
「先程まで生死の境目にいたんです。そうなるのも仕方ないですよ。」
「うぅ…。すいません…。」
恥ずかしいのか赤くなった顔を長い黒髪で隠してしまった。
俺も段々と落ち着いてきて冷静さを取り戻してきている。
「取り敢えずお怪我はありませんか?どこか痛むとかは?」
「い、いえ。腕が痺れてるくらいで痛い所はな、無いです…。」
髪で隠れているからか少し籠って聞こえるが、大きな怪我が無いことに安堵する。
「それは良かった。よくモンスターの攻撃を耐え忍んでくれました。お陰様で怪我をした方々は無事生還出来ましたよ。今頃救護室で応急手当を受けている事でしょう。」
「そ、そうですか。良かった…。」
俺の言葉に安心したのか、彼女は安堵の溜息を吐き肩の荷が下りた様子。
「取り敢えず立ち上がれるようになったら一度帰還しましょう。また予想外のモンスターが現れないとも限りません。」
「は、はい。すいません。助けていただいただけでなくお待たせまでしてしまって。」
「気にしないで下さい。部隊の携帯食でも召し上がりますか?私はその間に素材と魔力結晶を回収してます。動けそうになったら教えて下さい。」
「……ではお言葉に甘えて。」
何やらかなり悩んだ様子だったが食欲に負けたようだ。
口の端に涎が垂れている…。
携帯食の乾燥ブロックバーを両手で持ち、小さな口で齧る姿は何やら小動物を連想させる。
お気に召したのか気持ち目に輝きが灯ったように見える。
死にかけた次の瞬間に食欲が湧くとは…。
彼女は結構大物なのかもしれない。
魔力探知と気配察知を常に張りつつカマキリの鎌と魔力結晶を回収する。
少女が動けるようになるのを雑談しながら待った。




