ダンジョン潜行者組織代表対抗戦 20
軽く打ち合わせをすると俺達は話をするべくその者達に近付いて行った。
近付くと彼らの怪我具合や焦燥した表情が良く見える。
怪我した3人は足を引きずる様に歩き、装備のその部分に鋭い斬撃の跡がある。
どの傷も後ろからふくらはぎを切りつかれた様な傷で、恐らく狙ったものだと思われる。
包帯が巻かれているが血の滲む傷の感じと傷に残った魔力見る限りこのダンジョンで発見報告のあったモンスターのどれにも当て嵌まらないが、何となく見当はついている。
「おい、もうすぐで脱出出来るぞ!頑張れ!」
「すまねぇ…。」
「脱出さえすれば救護班が待機しているはずだ!」
大柄の男性を支える2人が声を掛け続けている。
どうやら彼が一番重症の様で、支えられながらもフラフラと足取りがおぼつかない。
「ダンジョン対策本部の只野です。大丈夫ですか?何かあったんですか?」
「!!対策本部の…!助かった!ってええ!?只野 優人隊長!?」
こちらが声を掛けると支えてた内の1人が振り返り、安堵の表情を浮かべた。
しかしいたのが俺だと気付いたからか、次の瞬間には安堵の表情から驚愕に目を見開いている。
「驚かせてすいません。怪我人にこれを、少しはましになるはずです。今の状況を教えてもらえませんか?」
対策本部で支給される強力な止血薬と造血剤を支える男性に渡しながら質問をする。
「す、すいません!ありがとうございます。彼らのチームが強力なモンスターに襲われたらしいんですけど、俺達は怪我したこの人達を見つけただけで何が何やら…。」
「ありがとうございます。怪我で苦しいとは思いますが其方の方、何があったかお聞きしても?」
薬を受け取り恐縮そうに答える彼に礼を言い、肩を貸されている大柄の男性に声を掛ける。
一瞬何かに迷った様子だったが、彼は口を開き語り出す。
「ビッグマンティスに似たモンスターに遭遇した…。けど普通じゃなかった、です。」
「長さの違う鎌が3対6本生えてましたか?」
「多分…。不意打ちを受けて必死に逃げて来たのでちゃんと見れてないけど…。」
「ありがとうございます。何処で出現したか覚えてますか?」
「第三通路の中間層の手前だ、です…。」
「成程…。」
不意打ちをしてくるビッグマンティスに似たモンスター。
本来このダンジョンのこんな浅い場所で出現するモンスターではないが、思い浮かんだモンスターで間違いないだろう。
あの少女がいないのも気になるし、放置をしては犠牲者が出かねない。
油断だろうか、それとも目当てのモンスターが見つかり有頂天になっていたのだろうか、はたまた将来有望な若者を見つけて浮かれていた?
切り替えよう。
俺の中で何かがカチリと鳴る音がした。




