ダンジョン潜行者組織代表対抗戦 18
さっさと仕留めて魔力結晶を集める方にシフトする事にしよう。
気配を殺したまま人差し指に魔力を集め小さな刃を形成する。
勘づかれて逃げられたらこの小ささだ、また探すのが大変なので極めて慎重にだ。
このモンスターの発見報告があったのは過去に1件だけで、実物は俺も初めて見る。
俺の探知能力があればすぐに発見する事が出来ると踏んでいたが成程、これは見つからないはずだ。
このモンスターから感じる気配と魔力は極めて小さく魔力の性質を見る限り高速移動に特化したものになっている。
推測になるが、亀の見た目からは想像できない素早さで動き逃げるのだろう。
ダンジョンにはかなり潜っている方だと思っているが、未だに見た事の無いモンスターや新しく発見されるモンスターの発見報告は後を絶たない。
定期的に発刊されるダンジョンモンスター図鑑(対策本部監修)は潜行者は勿論のこと民間にも結構人気があるらしく、中々の売り上げになっていると某出版社の編集者が言っていた。
俺はあくびをしている小さな亀に静かに近づきその首に隠密した魔力の刃を素早くを突き立てる。
何が起きたのか分かって無いのか、あくびをしたまま気の抜けた様な表情の首が落ち体がびくりと痙攣し絶命する。
亀の首の切り口が下になる様に持ち血抜きをする。
甲羅の大きさは目測で約3cm、重さにして10gあるかないか、甲羅だけだと1g前後かもしれないので大体5カラットといった所だろうか。
加工したらもう少し小さくなるかもしれないが、レッドダイヤモンドはダンジョン災害前には1カラット5億円以上で取引された実績もあるとんでもない代物だ。
この件は他言無用だな…。
「2人共、ここであった事は誰にも話すなよ。こんな言い方はあんまり好きではないが命令だ。」
「承知いたしました。」
「りょ~か~い。言っても信じてもらえなさそうだけどね!」
俺が2人にそう言うと竜胆は軽くお辞儀をして答え、蜂谷は相変わらずニヤニヤしながら了承の意を返した。
「魔力結晶も溜まって来たしまた一度戻ろうか。」
「「了解。」です。」
俺は話している間に血抜きの済んだ亀を仕舞うと、2人を連れて入り口に引き返した。




