ダンジョン潜行者組織代表対抗戦 16
勿論時と場合によるが今はその時ではあるまい。
愉快な仲間と至福の一杯で英気を養った俺は再びダンジョンに潜っていた。
浅い場所のモンスターは竜胆と蜂谷が率先して討伐してくれたので殆ど消耗する事も無く先程潜っていた所まで来れた。
「物凄いスピードでここまで来ちゃったね。お兄ちゃん戦車と名付けよう。」
「とんでもない名前を付けないでくれるか?」
「あながち間違いじゃ無くない?」
「私としてはこの方法は少々恥ずかしいですが、誰かに見られてなければやぶさかではありません。」
「…。」
頭上と首元辺りから声がする。
今の状態はというと、小柄な蜂谷を肩車して竜胆を横抱きに抱えた格好になっている。
何でこんな妙ちくりんな格好になっているかというと先程俺が2人を待たせてしまったからである。
竜胆はあんな感じだったので何も無かったのだが、締められた蜂谷が駄々をこねたのだ。
俺が遅れた手前それを蔑ろにはし辛い。
と言う訳で俺が2人を抱えてダッシュして、進行方向のモンスターを2人が遠距離攻撃で討伐、そのまま俺が吹き飛ばし壁の染みにして魔力結晶だけを回収という形で駆け抜けた次第である。
途中で他のチームや対策本部のメンバーと出会わなかったのは不幸中の幸いだった。
この姿は知らない者からしたら余りにも意味不明だ。
知ってても意味不明かもしれない…。
取り敢えず誰にも見られなくて良かったとしておこう。
「とりあえず目的地に到着したから降りてくれないか?」
「えぇ~、楽だしもう少しこれで良くない?お兄ちゃんも美少女のふとももを堪能出来て嬉しいし一石二鳥でしょ?うりうり~。」
「…すいません少し酔ったみたいですのでもう少しこのままでお願いします。」
「こいつ等め…。」
蜂谷は見なくてもニヤニヤしてるのが分かる口調で肩車の状態で俺の頭を抱える様な体勢になり、竜胆は酔ったと言っていたが抱えた彼女を見る限り全くその気配はない。
俺の上着を握り、梃子でも動かない構えだ。
内心で溜息を吐きつつ、俺達はそのまま先に進んだ。




