ダンジョン潜行者組織代表対抗戦 15
俺は少女を納品所前まで手伝うと踵を返し、2人が待機する場所に急いだ。
将来が楽しみな出会いの後、ダンジョン前の待機所で2人と合流し竜胆が淹れてくれたコーヒーを一杯。
設置されたパイプ椅子に座り淹れたてであろう湯気の立つそれを一口啜る、苦味が控えめで少し酸味が強い。
今俺が飲みたい完璧なコーヒーだ。
その美味さに感動で思わず息が漏れる。
毎回の事ながら彼女は俺の事を把握し過ぎではないだろうか?
嗜好だけならまだわかる。
だがこの味が飲みたいタイミングまで完璧に把握してくるのはちょっとした恐怖に近い。
これがコーヒーだけに限らないのもである。
前に聞いた時は秘書だからですと躱されたが、俺は彼女は何かしらの特別な能力を保有していると確信している。
それはそれとして色々と助かっているため感謝しているのだが…。
「今日も完璧だな、美味いよ。ありがとう。」
「秘書ですので当然です。」
「流石だな。これからもよろしく頼む。」
「隊長が私の完璧である限り傍でお仕えいたします。」
「え、何このやり取りこわ…。グェ。」
どうやら今竜胆は機嫌が非常に良いらしい。
冗談めかした台詞と共に恭しく礼をした姿はとても奇麗で絵になっていて、まるで映画のワンシーンだ。
茶化した蜂谷が締められているが今はこの一杯を楽しむ事にしよう。
飲み終わったら再度ダンジョンに潜行してお目当てのモンスターを探さなくてはならない。
人間とは単純なもので、楽しい事や美味しい物を食べる等ポジティブな事があるとその後の事がなんでも上手く行く気分になるものだ。
必ずしもそうじゃないかもしれないが、少なくとも俺はそうだ。
他の参加者から見たらこんな事してる場合かと思われるかもしれないが多少の心の余裕を持って事に挑んだ方が何かあった時に落ち着いて対処出来るというものだ。
勿論時と場合によるが今はその時ではあるまい。




