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元教え子 東 紅 6

俺達はその後も順調に進み、行方不明者と思われる気配のする地点付近に到着したのだった。



何かがおかしい、今潜っているのは旧新宿駅ダンジョン、その中でも一番不安定な中央入口ルート。

なのに、今は不気味なぐらいダンジョンが安定している。


「…嵐の前の静けさか?」

「先生、何か仰いましたか?」

「いや、ダンジョンが妙に落ち着いているなと思ってな。」


心の内で思っていたことが言葉に出てしまっていたらしい。

独身だと独り言が多くなると言われているが、あながち間違いではない様だ。

気を付けよう…。


「そうですね、ここまで潜ってもモンスターは強くないですし、地形も複雑ではありませんでした。」

「しかし行方不明者が続出している…。これは何かあるかもしれんな。ここからは一層気を引き締めていくぞ。」

「はい、了解です。」


漠然とした嫌な予感、感覚が一般人とはかけ離れた適合者の勘とは良くも悪くも当たるものだ。

紅も警戒する俺の様子を見て何か感じたのか、先ほどの少し浮かれた様子は鳴りを潜め、厳しい表情で先を見ている。


そこから10分ほど移動した時、入り口で感じた行方不明者の一団を発見した。

男性三人組で全員息があるものの、意識はなく、かなり衰弱している模様。


「東、近くにいる第二部隊の小隊に連絡を、要救護者申請してくれ。マッピングは俺がしておく。」

「了解です。」


彼女が連絡無線で近くの小隊とやり取りしている間に、白い発光布(はっこうふ)(ダンジョン内での要救護者の目印に使われる)を見える位置に固定し、俺は三人組の装備と様子を確認する。


意識はないが外傷は殆どなく、装備も所々に汚れがあるだけで、破損などは特に見られない。

明らかにおかしい、抵抗していれば何かしら装備に痕跡として残るものだ。

そもそもダンジョン内で意識を失って動けなくなることは、死にも等しいが彼らは生きている。

この状態で考えられるのは、おそらく死霊系のモンスターが犯人であること。

しかし…。


「東、旧新宿駅ダンジョンで死霊系のモンスターの発見例はあったか?」

「いえ、少なくとも半月前の採取攻略の際に、新たに発見されたという話は聞いておりません。」

「そうか、そうだよな。これは思ってたより厄介かもしれんぞ。」

「この犯人は死霊系のモンスター?しかしこの人たちは生きてますよ?まさか…。」


そう、死霊系のモンスターは基本的に狙った獲物を憑き殺して仲間にしようとする。

しかしこれはそうしていない。

それに、旧新宿駅ダンジョンでの死霊系モンスターとの遭遇記録はなく、今回新たに発生したという事になる。


「この三人組はよくここまで生きて逃げてきたものだ。」

「死霊系のモンスターを想定してないでしょうからね。後光石(ごこうせき)も持ってなかったでしょうし。」

「こう言っては何だが彼らのお陰で下手人も大体把握出来たな。それに見てみろ。」


俺はそう言って、三人組が倒れていた先の道を指さす。


「成程、これのせいでしたか、ダンジョン情報管理局が泣きを見ますね。」


指さした先には洞窟然としたダンジョンの壁に、不自然な木製のドアが設置されていた。

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