ダンジョン潜行者組織代表対抗戦 14
彼女が急に顔を上げ、気配を殺していた俺を真っ直ぐに見ていた。
彼女の黒く濁った瞳が俺を捉える。
顔立ちは整っているが、疲れ切った表情にお世辞にもキレイとは言えない恰好。
申し訳ないが見た目からはとても実力のある潜行者には見えない普通の女性だ。
しかし真っ直ぐに俺を見つめ、その薄幸そうな顔立ちを驚愕に染めている。
「み、皆!」
驚きからか咄嗟に詰まった様な声を出す少女。
何とも儚くガラスの様な奇麗な声だ。
「何よ、そんな所で何してんの?それ預けたらまた潜るんだからさっさと歩いてくれる?ただでさえ役に立たないのに何してんのよ!」
「ご、ごめんなさい…。」
その声はリーダーと思われる女性の一括で遮られてしまった。
いうだけ言うとその女性はまた前を向き歩き始める。
男性3人も舌打ちや溜息など、各々マイナスリアクションをとると振り返り歩き出す。
少女が俺と彼らの背中を交互に見やりどうしていいか分からない様子だ。
俺は人差し指を立てしーっとジェスチャーをする。
彼女は静かに頷きこちらの意図が伝わったようだ。
つまりこの状態の俺が見えているのである。
対策本部の隊長格でも分からなかったり何となくでしか分からない者がいるというのに、今目の前にいる彼女ははっきりと見えている様子。
魔力察知か気配察知か…。
どちらかは分からないがこの子は少なくとも探知系に関しては隊長格に並ぶかそれ以上のものを持っている事になる。
何と言う事だ。
何故その様な子がこんな扱いを受けているのか分からないが、これはとんでもない掘り出し物かもしれない。
2人を待たせる事になり申し訳ないが俺は少女に少しお節介を焼く事にした。
彼女に近付き背負っている袋を少し持ち上げてあげる。
中々の重さだ、この小柄な少女が持つには少々酷だったことだろう。
前を歩くメンバーに聞こえない様小声で話しかける。
「初めまして。納品所まで少し手伝おう。気付かれると厄介そうだから黙っていてくれよ。」
「は、はひっ。あ、ありがとうございますっ!」
緊張からか驚きからか恐怖からか、ガチガチに体を強張らせた彼女から詰まった様な返事が返ってくる。
俺は少女を納品所前まで手伝うと踵を返し、2人が待機する場所に急いだ。




