ダンジョン潜行者組織代表対抗戦 1
東京ドームのグラウンドに大勢の人が集まっている。
装備に身を包み血気盛んに自信に満ちた表情をする者、真っ青な顔で仲間に心配されている者、周りを見渡し好奇心旺盛な様子を隠そうともしない者、携帯端末を使い配信をしているのか録画をしているのかハイテンションで騒いでいる者、そしてどこよりも早く実力者に話しかけようとギラギラとした目とカメラで見定めているメディア関係者。
多種多様な様子の人々がお祭り騒ぎで集う中、俺は三塁側のダッグアウトの中でその様子を眺めていた。
よくもまぁこんなにも集めたものだ…。
「隊長、ここに居られたのですね。気持ちは分かりますが気配を消すのは控えて下さい。なれてない者は驚いてしまいます。」
黄昏ていたら話しかけて来た女性は俺の部下であり副隊長の竜胆 蒼。
彼女は長い青髪をかき上げると色っぽい息を吐き隣に座った。
何と言うか細いのに色々でかいと言うか何と言うか…。
女性は男の視線に敏感だと言うし俺は極力彼女の方を見ない様にして会話をする事にする。
「すまないな。けれどこれを見てるとそうしたくなるのもわかるだろ?」
「お気持ちは察しますが隊長は控えめすぎます。そんな事では自信がないと思われてもしょうがないですよ。ご覧になりましたでしょう?SNSで好き勝手言っている連中を。」
「俺は余り気にしてないんだがなぁ…。」
「ダメです、気にしてください。表向きは対等という事になってますが隊長達をはじめ直属の部下である私達も貴方が組織の長であると思っているんです。しっかりしてください。」
SNS辺りから急激に機嫌が悪くなった辺りあの件は相当腹に据えかねたのだろう。
俺は余り気にしていなかったが皆は気にしていたらしい。
「今日も手厳しいなうちの優秀な副隊長さんは。」
「何時も申し上げておりますが私は役職上副隊長になってますが本当は秘書です。私が秘書として付き従う方があれほど侮られては面目が立ちません。」
表面は表情が変わらず冷静そうだが言葉尻の所々に彼女の憤りを感じ思わず身が縮こまる。
俺もよく怒られるが、それとは違う嫌悪感の様なものを感じる…。
どうしてこうなったのか…。
俺は空を仰ぎ見て少し前の事に思いを馳せた。




