とある天才の誕生
そこには少年の様に目を輝かせてボクの研究書類を見る彼の姿があった。
一瞬何が起こっているのか分からなかった。
隣で書類を読んでいる彼が見ているのは本当にボクのしわくちゃな論文だろうか。
すっかり自信を無くしていたボクにはそう思える程信じられない光景に心臓が跳ねる様な感覚になる。
彼は1枚1枚じっくりと目を通し、その度に表情に喜色の色が濃くなっていく。
ボクはその様子をドキドキしながら眺めていた。
そして一通り読み終わると彼は空を仰ぎ息を1つこぼすとボクの運命を変える話を始める。
「この理論を君が1人で?」
「う、うん。まだ本格的な実験は出来てなくて理論だけだけど。」
「誰かに協力を申し込んだりは?」
「理解を示してくれる人が居なくて…。」
「そうだったのか…。」
そう言うと彼は腕を組み何かを考えだしたのかうんうん唸りながら難しい顔をし始めた。
彼は一体何を考えているのか、あの時諦めて以降人に興味を持ったのは久しぶりだった。
「良ければ落ち着いた所で話をしないか?この事についてもっと詳しく教えてくれないだろうか。」
「え?」
「いきなり見ず知らずの男にこんな事を言われて警戒するのも分かるがこれは間違いなく今の日本を…いや、世界を救う素晴らしいモノだ。この研究が形になれば今差別に苦しむ人達も助けられるかもしれない。」
「そ、そんなに?」
「ああ、この理論は正に革命的だ。」
自信を無くし孤独だったボクが心から渇望し望んだもの。
ボクのこの理論を理解し認めてくれる存在。
その存在が今目の前に現れ話がしたいと申し込んで来ている。
生まれて初めて体が心が歓喜に震える感覚に戸惑うボクに彼は続ける。
「そういえば自己紹介がまだだったな。初めまして只野 優人です。この素晴らしい理論を唱えた貴女の名前を聞いてもいいかな?」
「ボクは黒川 百合っていいます。」
「良い名前だ。黒川さんいや、百合教授。今の世界を救う為に俺に力を貸してくれないだろうか。」
そう言って彼は右手の手の平を上に向けて差し出してくる。
ボクは此処に来る前とは違う意味で泣きそうになりながら震える手でその手を取った。
※作品の進行と関係ないので読み飛ばしていただいて大丈夫です。
ここまでお読みいただきありがとうございます!作者の仔猫〇です。
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私の所感としましては取り敢えず第2章完といった所でございます。
明日の更新は主人公の独白を挟んでその次の日に第3章の1話の開始を予定してます!
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