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とある天才の転機

ボクの孤独の闇の底がより暗く深くなるような感じがした。



その後、自信を失してもボクは自身の理論の探求をやめる事が出来なかった。

最早それの研究だけが自分の存在価値であり生きる意味だと思っていたからだ。


勿論学校の授業を疎かにはしていなかったが、それ以外の時間は部活の生徒の立場を使い化学室に入り浸り、そこでボクの考えた理論の簡単な実験や論理を固める作業に没頭した。

その様は何かに取り付かれたかのようだったみたいで、ボクはまたしても保護者同伴の面談を受ける事になる。


そしてそこからまた時が経ち、ボクが高校生になり入学を控えたあの日。

ダンジョンの突然の発生により、この世界の日常はガラリと姿を変えたのだ。


ダンジョン発生の際の地震により大規模な範囲で地割れや陥没が発生。

それに伴いインフラやライフラインに重度の損傷を与え、巻き込まれた人々の救助活動もままならない状況が発生した。


日本政府は直ちに緊急事態宣言を発令し緊急回線で友好国に対し災害援助をお願いしたが、ダンジョンの発生は世界中で同時に起こっており、どの国もそんな余裕は無かった。

幸いボクは発生には巻き込まれず、家も発生地点から離れていたお陰で倒壊する心配も無く普通に過ごす事が出来ていた。


こんな状況の為、学校は臨時休校になりボクは家にいる時間の殆どを新しい電気エネルギー生成手段の研究に費やした。

機材が無いため机上の空論とも呼ばれてもしょうがない事かもしれないが、ボクはノートに思い付いた事や

どの様な事が考えられるか等ありとあらゆる角度でその理論を煮詰めていった。


そしてある壁にたどり着く。

既存のエネルギー体系でボクの理論を実現するには肝心な部分が足りない、それこそ化石燃料や核融合に変わる全く新しいモノが必要だった。


灯台下暗し、理論にばかり拘り肝心な部分を忘れていた。

教授も一蹴されるはずだ、現実に無いモノで理論を作っているのだからこれが実現できないと判っていたのだろう。


ボクがここに辿りつくまで外では色んな事があった。

呪いだと非科学的な事を言われ連れて行かれる人、救助の為にダンジョンに入った自衛隊が数名を残し壊滅した事。


この事があり行方不明者の救助活動は完全に打ち切られ、ダンジョンに入る事は禁止された。

そしてダンジョンが発生してから約半年後、ダンジョンからの生還者が世間を騒がせる事になる。

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