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とある天才の苦悩

そして自分が皆と違うと気付いた時には既に手遅れだった。



手遅れだと気付いた時ボクは形容し難い孤独感を感じ、クラスメイトと話す事は無くなり今まで以上に勉強や知識に対する好奇心を満たす事に熱を入れるようになった。

そうすればこれ以上ボクもクラスメイトも、そして先生も傷付かずに済むと思ったからだ。


その様は親が心配するほどで、一度精神病院に検査に行かされた程だった。

普通子供が勉強熱心だったら親としては嬉しいと思うのだが、ボクの親はそうではなかったみたいだ。


検査結果で異状なしと出るとそれ以降両親が何か言って来ることは無くなり、ボクは寝る間も惜しんで知的好奇心を満たすために時間を費やした。

そして僕が中学3年生になる頃、1つの論文を完成させた。


それは既存の発電方法とは全く違うプロセスからなる発電方法。

ボクは知っている限り日本で有名な理系の大学の教授に意見が欲しくてその論文を大学に持って行った。


結果は門前払い。

アポも無くいきなり女子中学生がやって来ても敷居を跨がせてくれないのは当然の帰結であり、当時のボクの常識の欠如は如何ともし難いものだった。

電話を掛けてアポを取ろうとしても子供のいたずらだと思われて、電話を受けた人には相手にもされなかった。


ボクは必死だった。


気楽に話し考えを共有する、共に笑い合える、そんな友達が欲しかった。

この暗い闇の底にいる様な孤独感の中で、ボクを()い上げてくれる存在が欲しかった。


きっとこの論文を読んでもらえれば、このまま努力を続ければ…。

そんな根拠の無い自信だけが唯一の支えで、ボクの暗い孤独を紛らわせてくれた。


そう思い過ごす事半年、父が大学の教授にアポが取れたと言ってきた。

この湧いて出たかのような知らせにボクは飛び跳ねんばかりに喜び、すぐに資料を用意し紹介された大学に赴いた。


事務の人に案内され面談室に向かうとそこには難しそうな顔をした初老の男性と、その助手と思われる女性が待っていた。

ボクは期待に逸る鼓動を落ち着かせ論文のコピーを渡し内容を説明する。


説明を終えたボクに帰って来た言葉は残念な事にボクの望むものでは無かった。

寧ろ期待以下どころでもない思ってもみない言葉だった。


「子供の妄想、机上の空論だな。私は忙しいのでこれで失礼するよ。それは持って帰ってくれたまえ。」


教授はそう言いボクの用意した資料を一瞥するとそそくさと部屋を出て行き、助手の人が続く。

ボクは言われたのか言葉の意味が分からず暫くの間呆然と教授の出て行った扉を見ていた。


言われた事の意味を理解し意識が現実に戻った時、ボクは自分の努力が踏みにじられ、支えであった自信砕かれ、気付けば泣き崩れていた。

ボクの孤独の闇の底がより暗く深くなるような感じがした。

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