東京メトロ浅草駅ダンジョン 19
彼女は俺の返答に満足したのか、先程よりも笑みを深めて頷いた。
「それで、俺にお願いって何なんだ?さっきの件を黙っていて欲しいとは違うんだろう?」
「はい。先ほどの事は貴方様に信用していただくために開示したにすぎません。」
「じゃあ何なんだ?」
「その話は後にいたしましょう。後ろにいる博士もお待たせしていますので、先にアイテムの呪いを解くのが先決かと。」
「…それもそうだな。」
やはり分かっていたか…。
彼女は魔法使いのクラスの中でも指折りの実力者だ、魔力の扱いに関しては並ぶものは中々いない。
その実力者たちの中でも魔力探知にも長けた彼女に今の状態の百合が分からないはずが無かった。
「それも予知能力によるものか?」
「はい。姿が見えない事には驚きましたが観た時に貴方様が誰かとお話している様子でしたので。口ぶりから黒川博士かと。」
『なら話は早いのだよ。沼須喜氏、君はこの池の仕様を教えてくれるつもりなのだろう?』
機械から百合の声が聞こえた。
なぜ今まで黙っていたのかは分からないが、彼女なりに何か考えがあるのだろう。
「そうですよ黒川博士。お久しぶりですね、ご機嫌如何ですか?」
『うむ、相棒と楽しくダンジョン探索をしていたから今は大分良いと言えるのだよ。』
「それは良かったです。さあこちらにいらしてください。」
そう言うと美白は後ろを向き、池の方へ歩き出す。
俺達は顔を見合わせ彼女の後に続いた。
「この池の利用方法は簡単です。そのアイテムを落としたモンスターの位と近い大きさの魔力結晶を持って来て一緒に沈めるだけです。するとあら不思議、別のアイテムか効果の変わった似たようなアイテムに変化されます。時間が無くてあまり検証は出来ていませんが、そこは研究者の方々にお任せします。」
「…いいのか?」
「はい。これは民間の手には負えません。それこそ余計な諍いの原因にもなりえます。貴方様の膝元で管理して下さった方が苦労も少なそうです。それにこれは今からするお願いの前金とでもお思い下さい。」
この池に関しては利権周りや組織間の力関係等色々な心配事がある。
ただただ管理が難しくて面倒くさいから丸投げしたいのか、そういったギルド側の利益をこちらに譲ってでもそのお願い事とやらが大事なのか…。
俺はこれから何をお願いされるのかと戦々恐々としながら美白の次の言葉を待った。




