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8.私、16歳。婚約者とクラスメイトな生活は

「魚でよかった?」

「はい。ありがとうございます」


 最近、私は婚約者と昼食をとっている。無意識に手が気になる私は、彼がフォークを操る様子を観察してしまう。


 指の関節と細さのバランスの良さが半端ないわ。いや、そこは肉付きっていうのかしら。


 レイラとしての私は、幼児からは随分と成長したものの指が短く幼い感じが抜けていない。


 まぁ、これも悪くはないじゃないかと納得させていたら目が合ってしまった。


「あ、量が多かったら食べるよ」

「大丈夫です」


 そしてさ、なんか普通にイイ奴なんだよね。


 見た目が一見無関心というかぼんやりしてそうなんだけど、気がつくというか気配りが、私とは雲泥の差よ。


「あの」

「ん?」

「飛び級の事、伝えていなくてすみませんでした」


 校舎が違うのもあり、滅多に見かけなかったのもありで、すっかり失念していたのた。そう、同じクラスだなんて教室に入った時に知ったのよ。

 

 あの時、お互いのフリーズ感は、婚約してから何年目かにして初めて息がピッタリあったわ。


「特に謝る事はないと思うけど」

「けど?」

「たまにしか顔を合わせていなかったから、毎日こう挨拶したりとか不思議な感じ」


 フッと目を細め笑った時の眩しさよ。


 言葉を促したのは自分だが、なんか後悔した。


「私、あまりグループで行動するのが苦手らしくて。最初は二人で昼食なんて気不味いかなと思ったのですが……違いました」


 私がケイン・ヴァースの婚約者だと知った周囲は、昼は一緒で当たり前だよねという雰囲気があり、無理に友達を作ったり食べたりしなくて良いんだと、助かったので彼には感謝している。


「今、というか貴方といる時は音を遮断しているから好きにするといいよ」


 この世界には魔法がある。皆が少しだけ、ちょっとした特技くらいのレベルだけど人により使える力は違う。ケインは、音に関してなのかな。


 でも、いったい何故、そんな事を言うのかな。


「伝えていいのか、わからないけど。初めて会った時から切れそうな糸みたいだから」


糸って何?


「あと、俺を見ていないのも気づいた」


見ていない?


「盤石な家に育ち家族仲も良好で、何不自由ない環境なのに。貴方は、何かに不安がっている。なにより、俺に対して全く関心がないのも知っている。ソレは今もだよね?」


 黒髪の隙間から、蒼い目が私に真っ直ぐ降り注ぐ。


「最初の態度は、俺が悪かった。頻繁に会う事も手紙すらまともに書かずで」


 確かに、挨拶をして気まずい時間が流れて無駄にお茶ばかり飲むから毎回、お腹がタプタプで。手紙も全く無いわけではなかったが、内容は定型文だった。


でも、特に気にならなかった。他人なのだからそんなモノだと思ったし、煩わしくないから逆に助かっていたくらいである。


「どうして、今、このような話をされるのですか?」


 今まで、適度にドライな関係を保てていたはずなのに。


意図が全く読めない。


「分からない。ただ、あの時、不貞をするように見えるのかと腹が立ったけど」


 それは、確かに私が悪かった。もっと柔軟な言い方にするべきだったわ。


「その件については申し」

「謝罪が欲しいわけじゃないよ」


じゃあ、どうすれば?


「貴方がクラスメイトになったのも運だと思うから、これを機にそんな輩ではない事を証明しようかなとは思っている」


 なんだ、やっぱり根に持っているだけじゃない。


「何か言いたそうだけど?」

「私が? いえ、全く」


 出会ってから随分と成長したけれど、まだ子供っぽいなと笑いそうになるのをこらえるレイラだった。


「なんか、いい感じの仲だよなぁ」

「癒し系と癒し系の最終形態って何かしら?」

「しるか」


 クラスメイトから生温い視線、いや、初々しいカップルを見守ろうの会が結成されている事を二人はまだ知らない。






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