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5.私、14歳。婚約者さん、無理しなくて良いのよ?

ピーチチッ


 敷地内にある温室は冬場は閉じているけれど、今は天井が開けられ心地良い風が頬を撫でていく。


 昼寝には最適なお天気ね。残念ながらがその願いは叶わないだろうけど。


 空を眺めるのは諦め、目の前の人間に視線を戻す。


「さて、音漏れ防止、口元を読まれないように曇りガラスの仕切りも用意したし、お互い話したい事を言いましょう」


 この国の子供は、14歳から18歳迄学園に通わねばはらない。という訳で私も一週間後には学校へ入学である。


 逆に幼少期の方が重要ではと思って調べてみたら、小学校まではいかないもの小規模の教室があり、そこでは八歳から無料で日に4時間程学ぶようだ。ちなみに私は家庭教師を問答無用でつけられた。


 まぁ、六歳の時に字だけではなく生活に関する事を全く理解できなくなったという状況も影響しているだろう。


「今まで、まともな会話すらしなかった貴方が何故?」


 空色の目が髪の隙間から不審そうに私に注がれた。


 まぁ、無理もない。この一年、月に一度程会うという親達の暗黙のルールに駄々をこねてもなと会うには会っていた。


だだし、ほぼ無言。


 また、正確には彼、ケイン・ヴァースは寮生活であり試験等学業優先の為、会うのは今日で六回目だろうか。


「今日でお会いするのは七回目です。お互い政略結婚だとは理解しているはずですが、それにしても」

「それにしても無礼ではないか?と仰りたいのでしょうか?」


 どうやら回数は違ったようだ。彼は、私が被せ気味に発言した事が気に入らなかったのか、微かに眉間に谷間ができた。


「お互い様では?」


 私のせいだけにするのは間違っている。正しく言うなら、お互いが無関心を装っていた。


「時間は有限ですので、歩み寄るのはどうかと提案しているのです」


 家格は同等。むしろ金銭面ではウチが上だろうけれど、マウントをとりたい訳では無い。


「いずれ問題がなければ婚姻にたどり着きますが、そこが終わりではなく始まりになります。そこで、お互いが決まった役割をして不自由なく暮らすを目指したいのです」


 別世界の衝撃的だった六歳。そこから常に温かい食事、清潔な服や部屋、危険はあれど護られている日々。


 例えば、明日から突然、一人で家なし財産なしの生活になったら?


 無理だ。苦しい生活から楽な生活ならば、難なくいける。だが逆は?


「ケイン様は幸い次男ですし、このままいけば家督は継がない。けれどお互いの家は血筋は繋いでいかねばならないですよね?ならばそれさえ守ればあとは問題ない」


 古いなと思うし、実際そうだ。ただ変化を起こすには時間がかかるだろう。少なくとも最近は後を継ぐのは男女どちらでも構わなくなったのは大きな一歩だと思う。


「──俺に不貞をはたらけと?」

「はい。婚姻してからになり、まだ先ですが、その際には自由にして下さって構わないです」


 婚姻は早くて五年後くらい。だいぶ先の話である。


 だからこそ、先にルールを決めたいのだ。


「とりあえず、この月に一度会うというは継続しましょうか」

「……構わない。何を書いている?」

「今、話をしている事を記した契約書です。勿論、これは中央の銀行に保管します」


 中央の銀行とは、そのままの意味で首都のど真ん中に建つ銀行で何が有名かというとセキュリティが群を抜いているのだ。


 世の中に絶対はないけれど、99パーセントは安全だ。


「お互いが保管すべきですが、屋敷の人間を全て信用出来るかと問われたら、否です」 


貴方はどうか知らないけれど。


「ケイン様が不利になる様な事はないと思いますが。あぁ、とりあえず契約結婚予定の話を出来た日ですので、何かお互いがプレゼントするのはどうでしょう?」


 オーダーメイドの剣はどうかしら?服も良いかもしれませんね。


「……貴方は俺に何を望む?」

「私ですか?」


 あ、聞いちゃうなら言っても良いかしら。


「では、手を描かせて下さい」


……あら?口が盛大に開いたままですけど大丈夫かしら?




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