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18.私22歳。予想外だけど。

「うしっ」

「お嬢、いや奥様?気合はそろそろ控えた方がいいっすよ」

「お嬢でよいわよ。奥様って違和感だもの。あと、これは口癖だから無理」


それより。


「本当にこのままノウェールに定住するつもり?」

「そおっすねぇ。王都より楽だし環境は良いっすから」


ふーん。


「やっと結婚式も出来るものね」

「ブフッ!どうしてそれを!まだ誰にも話をしていないはずなのに!」

「秘密」


 毎回リアクションが楽しいから教えない。


「ロイ」

「なんすか?」


 私は成長しても夜が怖かった。寝ているときに襲われた事も一度や二度じゃない。でも、ロイが護衛騎士についてからパタリと悪い気配はなくなった。


『はよーっす』

『かったるそうねぇ』

『飲み仲間から毎晩誘われるんすよ』


 あれ、嘘でしょ? 知ってるよ。夜も扉の外で守ってくれていたわよね。


「昔も今も、ありがとう」

 

 なんか改めて伝えるのは照れくさい。けど、言わなきゃ伝わらない時もあるわよね。


「お嬢、なんか変な物を拾い食いとかしてないっすよね?」

「はぁ?するわけないじゃない!」


 気味悪い生き物でも見るような目つきは失礼じゃない?


もーいい。


「大丈夫ですよ。昔よりずっとお嬢は強くなりました。信頼できる侍女やメイドもいる。皆がお嬢を守ります」


 ロイから背を向けた瞬間、今まで聞いたことがない声をもらった。


「…うしっ」


 泣きそうな顔になってる自分を絶対に見せたくなくて振り向くのはやめといた。



✻〜✻〜✻



「ケイン」

「悪い、遅れた」

「まだ大丈夫」


 数日前に私とケインは式を挙げて夫婦になったものの余韻に浸る暇はなく、今日は婚姻後に初めて

の大きな会議がある。


 そう、ケインは、私と婚姻をしてケイン・ノウェールに。そして私は、このノウェールの領主となった。


 予定では長男である兄が継ぐはずだったのに、我が国の末姫に気に入られて専属護衛騎士になってしまった。


『なんか、気に入られたみたいなんだよねぇ。まぁ、団長になるより向いてそうだし』

『家は、領地はどうするんですか?!』

『父上や母上も満場一致で俺よりレイラのが安心して領民を任せられるってさ。俺もそう思うなぁ』


緩い、緩すぎる!


 反論しようにも私が聞いた時には既に決定した後だった。


「ケインは、家名を捨てて本当に後悔していない?」


 隣で乱れた袖を整えながら歩く彼は、一瞬、考えるような様子を見せてから口を開いた。


「全然、むしろノウェールの騎士団って精鋭だと王都でも耳にしていたから早く手合わせしたい」


 少年みたいな表情を浮かべている彼が、以前の無表情のケインと同一人物とは未だ信じられない。


「私は、正直不安よ」


 幼い頃からノウェールへはよく訪れていたし、改革案も出してきた。けれど、それはあくまでも裏方としてである。


 この両手に領民の生活がかかっているかと思うと怖い。


ポンポン


 背中を軽く叩かれて顔を上げたら、青い目と視線が絡む。


「別に一人で全部やる事はないし、その為の会議だろ?」


 そうね。上からの案に下からの案を擦り合わせ、よりベストな策を実行していく。


「これからよね」


 自分、なに弱気になってんのよ。今まで頑張ってきたじゃない。


「ケインの言うとおりだわ」

「そうそう、その意気」


 茶化した笑い方をしないでくれる?


「さぁ、ジジイどもをぶちのめすぞ」


 ケインが腕を差し出しながら耳元でとんでもない事を囁いてきた。こんな喋り方なんて予想外で笑えるわ。


「頑張ったら、手を描かせて」

「手だけ?なんなら脱ぐけど」


冗談よね? 


 聞き返そうとしたら扉の前まできてしまった。そうよ、今は会議の事だけを考えなきゃ。


「うしっ!」


私は、今日一番の気合を入れた。



       〜〜End〜〜

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