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75.スライム

「≪バニシック:燃焼≫」


ジュゥゥゥゥゥ……


スライムの球体の部分に魔法を放つと、煙を上げながら黒焦げになって行く。


「うっ」

(凄まじい悪臭だ、結構距離とってるんだけどな)

ママルはカース・ウルテマ・ヘッドを装着する。


そのまま焼け死ぬかと思いきや、その体積が一気に小さくなり、

同時にゴブリンを拘束していた部分が膨らむと、元の球体部は切り離された。

その時、切り離され真っ黒くなったスライムの一部と同時に、半端に消化されていたゴブリンの死体や草木が転がる。


新たに形成された球体部が、移動しながら先程のゴブリンの死体や小さく真っ黒焦げな自分の一部、そして他の拘束しているゴブリン等を飲み込んで行っている。



(焼かれた表面を自切したのか?!と、とりあえず呪術は通るっぽいから良いとして…、やっぱ地面で繋がってるのか?思ったより大分めんどくせぇなこりゃ)


もう少し距離を取ろう、と思い一歩後ずさろうとすると、

その足元には既にスライムの一部が滲み出て来ていた。


その粘着力で、上げる予定だった片足が拘束されたため、バランスを崩して尻もちをついてしまい、より一層足元のスライムに触れてしまう。


「くっそ」


ママルは尻もちをついた姿勢のまま、足元のスライムに触れて魔法を唱える。

「≪ぺトロ:石化≫」


触れた先からスライムは石化していくが、球体部は影響が見られない。

ママルは自身にくっついていた、石化した部分をそのまま力技で砕いて脱出した。


(ペトロは石化できる体積が決まってるのか?

いや、でもバニシックも球体部以外は焼かれていなかった…、

別個体だけど、その体積を受け渡しできる?

……もう無視しよっかな…。でもこいつがいるまま寝るのは嫌だな…)


それから、≪コレプト:腐敗≫≪エイジール:老化≫≪フラルト:虚弱≫や

≪マジックスフィア:魔力球≫等の攻撃魔法を試すが、(かんば)しい成果は得られなかった。


「………………め~んどくせ!!もういいや」

そう言うと、一本ミドルマジックポーションを取り出す。


「≪マジックアッパーⅥ:魔法最大強化≫

≪セカンドマジック:魔法ヒット数+1≫

≪サードマジック:魔法ヒット数+1≫

≪ファストマジック:魔法効果超高速化≫

≪コンテマジック:魔法効果連続発動≫

≪レジデントマジックⅥ:魔法常駐化最大延長≫

≪サークル:魔法円範囲化≫

≪ラージマジックⅥ:魔法範囲超拡大≫

≪バニシック:燃焼≫」


ママルは草原毎一帯を焼き尽くすと、マジックポーションを煽った。

「っふぅ……。さすがに終わっただろ…」


それから暫く、地面から湧き続けるスライムが、

場に残っているバニシックに焼かれ続けて行った。


――


「ふぅ、やっつけて来た」

「お、お主、酷い臭いだぞ…」

見ると、ユリとテフラは鼻を覆っている。


「ごめん、着替えるわ」


新品装備に着替えたものの、耳や尻尾の毛に付着した臭いは取れない。


「まじで最悪なんだけど……」

「ま、まぁ、スライムを倒せたのは、歴史上初かもしれんで」

「そ、そうですね、凄いです、よ」


「……………ちょっと洗ってくるわ…」


ママルは水が発生する魔道具を手に取ると、2人からまた距離を取った。



――翌朝


テントを片付け、一行は北東を目指して数時間歩いている。


「そういえば今更なんだけどさ」

「なんだ?」

「俺の≪バニシック:燃焼≫って魔法、植物は焼かれないんだよね、

草の先端がちょびっと焦げるくらいで。

でも≪マジックアッパーⅥ:魔法最大強化≫とかで強化したときだけ焼かれる」

「ふむ」

「でも≪ぺトロ:石化≫は、強化とかしなくても石に出来るんだよね」

「う~~む」


「お2人共、そういうの考えるの好きですね」

「なんか、こういう細かい事が気になっちゃうんですよ」

「わしは問題を出されると、一旦の結論を出したくなるのだ…」


「私は良く解らないけど、聞いてるのは結構好きです」

「それは良かったです」


「こういうのはどうだ。植物は、精神が希薄である」

「なるほど?」

「故に、呪術が通りづらい。ペトロが通るのは、直接触れるから。と言うか、

直接触れるくらいに、濃い状態の呪力でないと成り立たない魔法である。とかな」


「お~。めちゃくちゃそれっぽい」

「ふふん」

「あ、でもさ、例えば≪アンデス:不死≫とかの方がヤバそうだけど、

これは触らなくても人に通るから、濃い状態ってのがちょっと謎い」


「……不死とは、どういう状態になるのか、詳しく解るか?」

「詳しく…は、解らないかも」

「うぅむ……肉体が破損しても、魂と精神はその影響を受けなくなる。という感じかのぅ」

「なるほど」

「このくらいならば、石化ほど強力な力は必要なさそうな…、

と言うかお主、まさかまだ発動方法が解らないスキルがあったりせんだろな?」

「いや、もうないよ」

「全部出尽くしたか」

「まぁ、ユリちゃんが見た事ない魔法はまだあるけど」

「ほう、まぁ、気にはなるが、聞かないでおこう」

「えっ、なんで?」

「お主の魔法は、なんかグロいからの…」


「あ、そう……。てかさ、そんな石化を、ただ見るだけでやってのける悪魔って、まじヤバくない?」

「……………確かに」

「もし戦う事になったら、と考えると、ちょっと…恐ろしいですね」


(流れで話しただけなんだけど、結構マジな雰囲気になっちゃった。

いや、実際マジに考えると、相当ヤバそうではあるな…)


「まぁ、考えていても仕方あるまい。今は進もう」

「そうですね」

「だねぇ…」


「そろそろ、村とか見えて来てもよい頃だと思うのだがのぅ」

「いえ、見えました、少し右手の方向、その小さい丘を越えたら見えますよ」


テフラは視力自体は人間と変わらないが、夜目が効く事と、

そもそもの目線の高さにより、2人よりも周囲をよく見渡せる。


トワイトよりも少し大きいくらいの村が見えて来たので、

小走りで村へと向かって行った。

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