表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

68/181

67.整理

ママルとユリとクラレンドが、ヴリトラとどう対面するかを話し合ってた所に、

テフラが声をかけて来た。

「ちょっと、良いですか?」

「おう、子供達は…。皆寝たか…」

「はい」

「いやぁ、無事で良かったですね…」

「はい…。あ、いえ、それで、少し話してみたい事があるんですが」

「ふむ、遠慮するでない」


「子供達と話している時に、昔話になったんです。

その時、私が狩りで使ってたスキルの話になって」

「ふんふん」

「確か、≪促爪≫とか≪連牙≫とかって。でも私そんなスキル使えないんですよね…。それに、この2つだけで、他のスキルは見た事もないって」


「……ふむ…。なるほど……では、一回整理しようではないか」

「何を?」

「クラスについてだ」

「なるほど…」


「まず、恐らく、自らのこれまでの行いによって、クラスと言うのが与えられる」

「まぁ、そんな感じするね」

「畑いじりをしていれば農家とか、剣を振り回していると剣術士、と言った具合だな。それに加えて、なんでかは解らんが、その上位、ハイクラスと言うのになる事がある」

「私のスレイヤーとかですね」

「俺の呪術師とか、多分クラレンドさんの求道者もそうだと思う」

「俺が?そういうクラスなのか?」

「あ、はい。」


「敵、と言ったら良いか。グリッチャーだの、ワールドなんちゃらだのの口ぶりを聞くに、奴らはそのハイクラスを作ろうとしているのだと思う」

「そんな感じしたね」

「ハイクラスのコープスが欲しい、みたいな感じなんですかね」


「コープス?」

「あ、まぁ後で説明します」


「それで、そのハイクラスと言うのにはどうやったらなるのか」

「え?ユリちゃん解ったの?」

「いや、解らんが…。例えばそうだな。剣術士が、呪術師に変わると言うのは考えられん。グリッチャーは黒魔術師だったか?」

「そうそう」

「つまり、現クラスが一段上に上がるのだ。おそらく」

「なるほどね」


「そうか……。私は実際自分の事は、以前は猟人だと思ってました」

「では、猟人から派生して、スレイヤーになった。と言った所か」

「魔法薬や闘技場で、精神的に追い詰められた事は、まぁ、関係ありそうですね」


「うむ。それで、スレイヤーに変わった時、お主のスキルは上書きされたんじゃないか?」

「上書き?」

「≪促爪≫は≪瞬爪≫へ。≪連牙≫は≪双牙砕≫へ。どうだ、それっぽくないか?

そして他のスキルは、クラスが変わると同時に獲得した」

「な、なるほど…」


「あー、スキルは記憶ごと上書きされるのか。それなら俺も解るよ。言語中枢を書き換えられたから」

「なんか…。なんと言うか、ちょっと不安になりますね…」

「記憶が信じられないと、そうですよね。まぁ俺の場合は説明してもらってるから良いんですが。あと、クラスについて気になってる事、実はもう一個あってさ。

例えばユリちゃんなら、俺には結界術師と確認できる。巫女じゃなくて」


「なるほど」

「斧を使う盗賊は、斧術士じゃなくて、盗賊だけ。この基準が解んない」

「ううむ…。活動時間か?巫女としての仕事量は、そんなにこなしてないからのう」

「あー、斧振ってる時間より、盗賊してる時間の方が長いからか…」

「まぁ、これはクラスと言うより、アプライと言う魔法についての話になってそうだが」

「た、確かに」



「君達の話は…。難しいな」

「す、すみません…」

「…整理と言ったが、結局これ以上の推理も出来んし、ヴリトラの話をするとしようか」



ヴリトラの件についての情報を、テフラにも共有して話始める。


「こっちから見つける、もしくは見つけてもらう手段、と言う事ですか…」

テフラの言葉に、クラレンドが答える。

「俺は正直、まだ賛成出来んがな」

「まぁ、わしもそう思う。…わざわざ(やぶ)を突く必要があるか?」


「…クラレンドさん。しばらくは、逃げ回ってたんですよね?

でも、今はこの小屋に居る」

「……あぁ」

「それはやっぱり、子供たちが居るから動けない、だからなんですよね?」

「………そうだな」

「じゃあやっぱり、ヴリトラに対処できるならした方が良い」

「なるほどのう。同じ場所に居続けたら、見つかる可能性は大きく上がるしの」

「だから、俺がやる。って言うか、俺を使ってくれ」


そんなママルを見て、クラレンドは意を決したように言葉を出した。

「それは………。解った………。俺とママルの2人で行こう」

「わしらはこの小屋を守っとればよいのだな?」

「野生モンスターとかいるからね」

「私はっ…」

「テフラさん。大丈夫。あの子達、絶対に守りたいでしょ。そうして下さい」

「…ありがとう…ございます」


「それで、じゃあクラレンドさん。何か方法があるんですか?」

「確実とは言えないが、ある…。準備が出来たら立とう」



――



翌朝早くに、ママルとクラレンドは小屋を後にした。

山道をそこそこ早い速度で移動する事、数時間。

「このくらい離れたら良いだろうか…」

「まぁ、流石に大丈夫だと思いますが」


殆ど岩場になっている開けた場所を見つけると、2人は足を止めた。


「それが、竜魔笛ですか」


ドラゴンは、細かい発声が出来ない。

そのためか、念話と呼ばれる手法で会話をしている。


クラレンドが取り出した魔道具は、その念話に干渉するような念波を、

広範囲に拡散するものだ。

戦時中に、ドラゴン側の連携を崩す目的で開発された。



勿論、この大陸全土に轟く訳でもないので、

あまり遠い所に居た場合は不発に終わるかもしれないとの事だが、

逆に、付近に居ない事が確認出来るだけでも良い。



「では、早速やるか。準備は良いだろうか…」

「あ、は、はい…」

(結構大見栄を切っちゃたけど、緊張して来た…)


「……俺は…。いや。覚悟を…。決めるか」

「あ、なんだったら、俺だけで魔道具使いましょうか?」

「フ………。そういう訳にも行くまい。では、やるぞ…」


クラレンドは、大きく息を吸い込むと、竜魔笛を吹き鳴らした。


キイィィィィィィィン…………


(変わった音がするな、ちょっと耳が痛いくらいだ)


「ふぅ、こんなものか…」

「お疲れ様です」

「後は、どうなるかな…」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ