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66.強さ

「メイン!フォル!リティ!レート!…ベル!」

テフラが、獣人の子供達の名を呼びながら駆け寄った。


「あぁ…良かったぁ」

(獣人の子供、めちゃくちゃ可愛いな…)


「うぅ…テフラ…良かったなぁ…」

(ユリちゃん泣いてる?)



「ママルと言ったか、少し良いか」

「はい、何ですか?」

道中で既に名乗り程度は済ませている。この竜人はクラレンドと言う名らしい。


「…強さとは何だ?」

「え?」

「…俺は、ずっとそれを探し求めている」

「えぇっと、俺の魔法で、レベルってのが解るんですけど、それが高いと強い。のかなぁ」

「…なるほど。最初に使った魔法はそれか?やってみてくれ」

「えぇっと、では、遠慮なく。≪アプライ:鑑定≫」


●竜人:求道者:クラレンド Lv120 スキル:気道 練気 烈波 竜撃

避難民。今はただ、ひたすらに強さを探している

魔法耐性(小)物理耐性(小) 弱点:邪


(何も隠してない!スキルもレベルの割に少ないな)


「どうだ」

「えっと、レベルは120、ちなみにテフラさんで98とかです」

「なるほど。数値なのか…。いや…、なるほどな…」

「………何かちょと不満そうですね」

「…例えば、そのレベルが11と10が戦ったら、必ず11が勝つのだろうか?」

「え、っと。そういう訳じゃないかなぁ」

「………。数字の上では11が絶対的に上だ。だが、実際の強さではない」

「まぁ、確かに、そういう事になりますね」

「俺が言う強さとは、単純な戦闘力の話ではないんだ。もっとこう…なんと言うか…」


「どうしてそんなに強さに拘るんですか?」

「……………」

クラレンドは、じっとママルを見つめる。

「君は……………。俺は、君に良くない力を感じている」

「あぁ…まぁ、そうかもしれません…俺は、呪術って言う、その、

悪感情エネルギー?だったかな、それを使う魔法士なので」


そんなママルの言葉を聞いたクラレンドは、目を見開き大声を上げた。

「呪術?!!!」

「えっ…ど、どうしました?」

「呪いを扱えるという事は、……呪いを解くことも…出来るのだろうか」

「あ、はい、出来るものなら出来る、と言うくらいですけど…」


「……………………………ユリと言ったか」

「ん?…なんだ?」

「君は、このママルと言う者を信用出来ると思うか?」

「それは、無論出来る。テフラも同じことを言うはずだで」

(えっ、なんか嬉しいんだけど)


「解った………。少し………、聞いてくれるか」



クラレンド、と言うか、竜人族はこの大陸から北西に海を渡った先の大陸に住んでいる。そこで20年ほど前に、ドラゴン族と戦争になった。

最初はドラゴン族が優勢だったものの、竜人族は対ドラゴン特効の竜撃と言うスキルを編み出し、流布させたことにより逆転、竜人が優勢に立つ。

だがそこから、ドラゴン側が悪魔召喚の儀式を行い、

カトブレパスと呼ばれる悪魔を召喚した事により一変。

その瞳に見つめられた竜人は次々と石化して行った。


竜人族は直接戦闘でドラゴン族を凌いだものの、もはや何の意味もなさなかった。

生き残った竜人達は、国を捨てて散り散りに逃げ出した。

その際、海を渡る決心をした竜人の中で、今いるこの大陸にたどり着いたのは、

クラレンドと、シャスティと言う竜人2人だけだった。


シャスティは、クラレンドの妹で歳はまだ17。

両親と妹が石化させられた時、石を砕こうと後からやってくるドラゴン達を尻目に、クラレンドは妹だけを担いで逃げ出したのだ。


噂に聞けば、石化は悪魔の呪いだと言う、

であれば、いつか呪いが解けるかもしれない。そんな方法があるかもしれない。


当初、その方法を探そうとこの大陸を巡る予定だった。


だがそんなある日、ドラゴン族でほぼ最強と名高い、

ヴリトラと言う名のドラゴンと会敵してしまう。

わざわざこの大陸まで追いかけて来たのだ。


実際1人では勝つことは出来ず、決死の思いで逃げ出した。

たまたま見つけた洞窟に逃げ込んで、その奥が遠い場所に繋がっていた。

その洞窟には、最も硬いとされるアダマンタイト鉱が混じっていて、ヴリトラでも破壊できなかった。そんな幸運でもって生き延びることが出来た。



以来、クラレンドは山に籠もり、己を磨き続けることになる。

ヴリトラから隠れ、石のシャスティを守る生活を20年弱。

時々山を下りてみるが、未だにヴリトラの目撃情報は絶えなかった。


これが、クラレンドの人生だ。

戦時中は、クラレンドも何体ものドラゴンを殺した。

だから、善悪を問うつもりはないと言う。

そもそも、どちらがしかけた戦争だったのかも解らないのだからと。

それでもママルは思う。なんて窮屈で、虚しい人生なのだろうと。



「シャスティさんは…?」

「風化してしまわないよう、厳重に保管してある…」

「ママルよ、石化の呪いと言うのは解るのか?」

「…………、えっと、どこから説明しようか」

ママルは自身における能力の説明において、必要な箇所を最初に話す、そして。


「俺には、≪ぺトロ:石化≫と言う、相手を石化させる魔法がある。でも、使い方が解らないんです」


ペトロが他のスキルと違うのは、元から相手を石化する呪術魔法だという事だ。

そのため、こちらの世界で使えた場合どうなってしまうのかは解らないが、

これまでは読んで字のごとく、であるからして、おそらく同じような事が出来るはずだ。


だが、別に何かを石化させたいなんて思ったことは無いので、

使えないなら使えないでいいや、と思っていたのだった。

(アドルミアではゴミスキルだったしなぁ…基本通らないし、通っても硬くなるし)



「つまり!その使い方が解れば石化を解呪できると!?」

「おそらく、ですが」

「…………、いや、解っている。断言できるわけではないと…。

それでも、希望が見えた…、ようやく…………」

「ちなみに、ヴリトラってのはもしかして、白銀に光る姿をしてますか?」

「そ、そうだが」

「それなら、見た事がある気がします…、何か月も前ですが、シェーン大森林の西側の滝つぼで…」

「…やはりまだこの大陸に居るのだな…」


「その、正直な気持ちを話します。まず、石化はなんとか解呪出来ないか試したい。それとは別に、ヴリトラって奴を倒すのに手を貸そう、とは、言いづらいです」

ママルは、ヴリトラはモンスター化していないと見ている。

転生初日、一目見たあのドラゴンが好きに暴れまわったとしたら、

あの辺りの樹々や、それほど遠くないだろうアルカンダル等が無事でいるのはおかしいと考えたためだ。



「そこまでは、望んじゃいないさ」

「いえ、その、それは。戦争なんてどっちが正しいか解らないからです。

クラレンドさんは良い人だけど、国が何やってたかなんて知らないし。

でも、普通に20年近くも粘着してる奴って何考えてるか解んないから、話

してみたいなって」

「……正気か?!」

「最強のドラゴンなら、なんで戦争したのかも知ってるかなって」

「それはそうかもしれないが…危険だ」


「クラレンドや。ママルはお主が思ってる何倍も強いと思うで」

するとクラレンドは、信じられないと言った表情でママルを見つめた。

「君は一体………」


「あ、そう言えば、最初どうやって俺の魔法弾いたんですか?」

「……魔力と気力、その違いについては知っているか?」

「いや、解んないですけど」

「どちらも同じだ。精神力。そこから出力される形が少し違うだけ、それが俺の考えだ」

「なるほど…」

「気力を込めれば魔力にも干渉出来る。逆も然り。

アプライと言うのは、魔力自体は強いものでは無かったからな。

そして俺は≪気道≫というスキルで、そういう物の流れを感じ取ることが出来る」

「な~~るほど」

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