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60.転移

グレムズのアジトまでの道のりを、3人で歩いている。


「途中に泊まれる村とかあるかなぁ」

「1つ、イーツという村があるらしいで」

「お、どのくらいで着く感じ?」

「丁度夕過ぎくらいに着いて、次の日にグレムズのアジト、アルダイト山脈の麓に着く予定だ」

「ありがとうございます」

「まじ助かる」


「こういうの、テフラも意外と適当なんよなぁ」

「すみません…なんとかなるから良いか、みたいな感じで、気づいたら考えから抜けちゃうと言うか」

「わっかるぅ~~~」

「仕方がない奴らだの~~」

そういうユリの表情は、まんざらでもない。


「ディーファンでも、結構ダラダラしちゃってたなぁ」

「私も…」

「力仕事は色々やってくれとったではないか」

「……俺達で、脳筋コンビ結成だ!」

ママルはそんなふざけた事を言いながら、テフラに力こぶを作って見せる。

ママルの腕は全然筋肉があるようには見えないが。

「ぅぅ……………」

(テフラさんが、珍しく縮こまってる…ユリちゃんにやるみたいな、変なからかいは止めておこうか…いや、たまにやりたくなるかも)



「皆は結構、国内を行ったり来たり、忙しそうだったのう」

「流石に、情勢的に仕方ないんじゃないかなぁ」

「う、馬の数を不安視してる声も聞きましたね」


「あ~、空間転移とか出来たらな~」

「そういえば以前、そういうスキルがあるのに不発だったと言ってたな、何故だ?」

「解んないけど、ゲーム内にあった龍脈だのってのが、無いからじゃないかなぁって勝手に思ってる」

「………ふぅむ………いや、それはおかしいでな」

「……なんで?」

「お主の魔法は、そもそもゲームという物の魔法を再現してないんだろ?

むしろこちらの世界に合わせてか知らんが、作り変えられとる、

自分でそう言うとったではないか」

「た、確かに…」

「であれば、使い方が違うんじゃないですか?」

「……ちょっと、試してみよっかな」


(ええっと、村の名前を呼んでみたり、村内をイメージしたりしても出来なかったから、あとは、……………ターゲッティング?やってみるか)


ママルは一応2人から離れ、20メートル程先の地面を、そこに転移するという強い意志を持って見つめる。


「≪ファストラ:空間転移≫」



パァン!!!

と弾ける様な音と共に、ママルはターゲットした場所に転移していたが、

同時にドゴッ!!と低い音と、ブオオオッと強風が巻き起こりつつ、

ママルの周囲は火花のようなものが散りながら、土煙が強風と共に辺りに拡散され、思わずユリとテフラが叫んだ。


「うわっ!!な、なんだ!!」

「ママルさん!?」


「な、なにこれ…」


ママルは、下半身が地面に突き刺さっていて、周囲の土が隆起している。



2人がママルに駆け寄りながら声を掛ける。

「と、とりあえず転移は出来たみたいだの…」

「大丈夫ですか?」

テフラがママルの両腋を掴んで、地面から引っこ抜いた。


「あ、ありがとうございます…、いや、なんだこれ」

「狙った場所に転移したのだろ」

「なんで埋まってんの…」

「そうだな………。おそらく、地面を狙ったのだろ?だから、その狙った地点にお主の中心点が移動した、と行った所ではないか?」

「中心点…、いや、まぁ確かにさ、そうじゃなかったら、

じゃあどこが起点に移動されるんだってなるけどさぁ………使えねぇ~…」


「ぷっ」

「ふふふっ」


「あっ!酷い!!」

「す、すまんの…ぷふっ」

「すみません……ふふふっ」


「いや、待って、使いようはあるはず」

ママルはそう言って、また2人から離れると、

小石を空中に放り、その小石に狙いを定める。

「≪ファストラ:空間転移≫」


パァン!!!ブオオオオォォォォォッ


今度は地面に埋まらずに移動できたが、

小石は粉々に砕け散りながら超速で飛んで行った。

「ど、どや!これならまぁ使えるんじゃない?」

そう言いながら振り向くと、2人は耳を塞いでいた。



「その音と光と、風はなんなのだ」

「なんか凄まじいですね」

「わ、解んないけど…、その、体感で、空気が弾けてるんだと思う。

何もなかった場所に、俺が一瞬で現れたりするからかな」


ママルの元居た地点は、ママル一人分の体積が急に消失するため真空となり、周囲の大気が一気に流れ込む。

ママルが出現した地点は、ママル一人分の体積が急に出現し、元々あった大気が一瞬で押し出される事で圧縮されプラズマが発生し、音と光が響く。

その後周囲に拡散し突風を起こしていた。



「しかし、スキルを持っとるのに、その使い方も効果も解らんというのは、

…なんとも……お主らしいの」

「あ!バカにした!」

「だって、他にそんな奴見たことないわい」

「実際、ママルさんは他の人と違いますからね」

「え、まぁそうだけど、なんかそう言われると、寂しいような」

「…それを言ったら、わしも自分が何なのか解らんでな。

それでも元気に生きておる、心配するな」

「それなら私も、自分の今の状態の事はあんまり解ってないですよ」

「はははっ、ありがとー、2人共」


(とりあえず、便利と言えば便利だけど、

騒音とか迷惑だし、あんまり使わないようにしよ。

ってか、もう1個使い方が解らないスキルあるんだよな)


「あ、いや、待って、おかしくない?」

「何がだ」

「あの、クァダバル、だっけ、あいつが急に現れた時の事、テフラさん覚えてますか?」

「はい」

「あいつの転移みたいなのは風とか起こらないのに、なんで俺だけこんな感じになるんだろ」

「………なんででしょうね?」


「…ん~…………、仮説だが」

「お、聞かせて」

「急に現れたら、空気が弾ける?と言うのは良く解らんが、それって多分、物理現象の一種って事だろ?」

「まぁそうね」

「お主の精神が、その物理現象が基準の世界から来たから、とかどうだ」

「どうだ、って…。まぁ、納得性はあるね」

「じゃぁ、一旦そういう事にしとき」

「ちょ、何それ~」

「どうせ答えは解らんだろが」

「まぁ、そうだけどさぁ…」

「ふふふふっ」

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