表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

49/182

48.売人

「ふむ、ではわしはその子らの所に行ってくる。人避けの守りを張っておくが、お主なら見つけられるだろ」

「解った…気を付けて」


魔法薬を売った人間は既に見つけていて、今はそいつの後を追っている。

ちなみにユリちゃんの所へは、テフラさんが上からジェスチャーで案内してくれた。


男が家の中に入るのを見ると、テフラが降りて来て合流した。

「行きますか」

「ですね、中に何人いるか解らないし、とりあえず俺が先行します」

「では、私は逃げ出すものが居ないか見張っておくので、何かあったら呼んでください」

「了解です」


ママルが家の扉をノックする。

「すみませ~ん」

(……まぁ、当然出ないか)


バギンッ!!

鍵がかかっているドアノブを、そのまま捻り壊して侵入した。


「な、なんだお前は!!!」

「≪アームパライズ:腕縛り≫」

「くっ!なんだ!腕がっ!」

「ちょっと静かにして」

周囲を見渡すが、仲間の気配は特に感じられない。


「なぁあんた、魔法薬を売ってただろ?」

「なっ、くっ……………そ、そうだ…」

「あれはどういう効果があるんだ?」

「………知らねぇ…」

「どこで入手した」

「……………」


(めんどくさいな。どうしようか…≪シンカー:思考低下≫では、

まともな受け答えが出来なくなる恐れがあるし…ちょっと脅かすか)


「≪モラー:士気低下≫≪ロストV:視覚低下≫」

5感それぞれに対応しているロストは、アドルミアでは敵の感知、追跡距離を縮める効果があった。


「なっ、なっ、何をっ!目が!た、助けてくれ!!俺は何も知らない!!」

「答えてくれ、どこで入手した?」

「ひ、ひ、昼に…来たんだ、男が、配って回れと、薬を持って。

それで街中で配って回った…もっと欲しくなったら、この辺りに来いと言って」


「なんで言う通りにするんだ?」

「つ、妻がっ!攫われて!…仕方なく!」

「……なんでわざわざ金を受け取る?」

「そうしろと言われてるだけだ!結局全部持ってかれる!」

(売人として使われてるパターンか…他にも居そうだな)


「一応聞くけど、奥さんが生きてるのは確認出来てる?」

「わ、解らない…」

「なぁ、聞いてくれ、俺はこんな事をしてる奴らを見つけ出したいんだ。信じられないかもしれないけど、あなたも被害者だと言うなら、傷つけるつもりはない」

ママルは一応、アプライでモンスターではない事を確認したあとに、状態異常を解除した。

(言ってしまえば、この街の住人全員が被害者っぽいが…。

加害者側に行ってしまった人まで救うなんて、流石に無理だしなぁ)


「その男とは何回会ってる?」

「正確には、覚えてない、…1日か2日毎に、朝だったり、夜だったり…。来て薬を渡されるんだ」

「ふむ…その男に見覚えとか、居場所に心当たりとかは?」

「解らない…自警団もいつの間にか殺されちまってて、もうどうしようもないんだよ…」


「解った、じゃあ、この家でその男が来るのを見張ってても良いかな?」

「…………そうだな、こんな事を続けるくらいだったら、あ、あんたに乗っかってみるか…。俺にもう失う物など…今いつでも殺せただろう、この命くらいしかないしな…」

「ありがとう。俺はママルだ、他にも仲間がいるから呼んでくるよ」

「俺はショーンだ。よろしく頼む…」


――


その後皆と合流し事情を話して、兄妹と共にショーンの家の2階で待機させてもらうことにした。

ユリに≪人避けの守り:人認識阻害≫で2階部分を覆って貰ったので、

この場にいる人の気配は外には伝わらない。


宿に、尾行に邪魔だしと荷物を置いて来ていたのでママルが取りに戻ると、

尾行途中で眠らせた3人はいずれも刃物で殺されていて、

おそらくあの女がやったのだろうという気がした。


――


「モンスターだけを襲うモンスター…?ありえるのか?」

「う~~ん…でもそうとしか説明が付かない感じだったんだよね」

「例えば今、私がモンスター化していたらどうなりますかね」


「…あまり考えたくはないが……。そうだな、今の仮説だと、変質直後ならば見境なく襲う。理性を取り戻した後であれば、まぁわしらへの攻撃はしないかもしれんが、お主が知らぬ人を襲う可能性は十分にあると思う…、そしてその対象は…」


「アルカンダルの城の奴らなんかは、ちゃんと攻撃する相手を選んでたからね」

「…うむ。つまり、攻撃を止めることは出来ないが、ターゲットは選べる」

「……そうか、ならあの女の人は、モンスターを見分けるスキルか何かを持っているんだ」


「…もしくは、街全体を見通す何かでもって、状況判断でモンスターを索敵しとるとかかの」

「ってなると…、えっと、どうなるんだろ」

「とりあえず今は放っておいてもいいかもしれませんが…」

「うむ、だが、周囲からモンスターが居なくなったらどうなるか…」

「前もって倒した方が良いのか、放置が良いのか、って事ね。うぅ~ん…」


「それともう一つ気になるのだが、……モンスターが攻撃するときに必要な事はなんだと思う?」

「え?なんだろ…」

「強さですかね」

「うむ。わしもそう思う。いくら加害欲があったとて、理性が働いている限り、

負けると解っている相手には喧嘩は売らんだろ」

「さっきの攻撃対象を選んでるって話だよね?」

「いや、その対象はモンスターで間違って無さそうだでな。

そうではなく、簡単に強さを得る方法は何か。という話だ。

わしはそれは、群れる事だと思う」

「なるほど…」

「なのにその女は1人だったのだろ、だとしたらかなりの強さを持ってるという事になる。まぁ仲間がいないという確証はないが。…レベルとか言うのも高かったのだろ?」

「そうだね、82とかだったかな」


「つまり状況的に、テフラに起こった事と近い気がするのだ」

「なるほど…、そうかもしれません」

「何が起こったのかも気になるが、これが、つまり急激に強くなる様な変化を起こすのが、意図的なのか、完全に偶然なのか、の方が気になる」

「確かに…。意図的だったら結構やばいかもね」


「……まぁ、考えて答えが出るものでも、ないのだがの…」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ