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36/195

35.相反

シイズ村から逃げ帰ったサイは、残った盗賊団サーチスネークの面々に、

グスタフ、ギャス、その他9名の団員の死と、

それから、グスタフからボスを任されたという嘘を告げる。


そして、シェーン大森林にあったエルフの村は、

謎の人物が得体の知れない力でもって守護しているため、近づかないようにと。


(そもそもグスタフは、なぜ拠点を移すという話をしだしたんだ…。

特にシェーン大森林の奥なんかに根を張っても、やり辛い事この上ないと言うのに…)



サイは暗殺者として強力なスキルを獲得しているため、

グスタフの暗殺をやろうと思えばいつでも出来た。

だが求心力が違った。ただ殺してもこの団を奪うことは出来ないと諦めていたし、

グスタフはそんなサイの心中を見抜き、だからこそ右腕としていたのだ。


現在残っているのは約20名、減ってしまったが、

一般人の殆どは戦闘系スキルを持っていないし、まだまだ充分好きに出来る。




「おい…カータス…また探してくれ」

カータスはテイマー系のクラス、鷹使いを習得しており、

鷹を自由に操る≪ホークプルスト≫、

広域を見通す≪ホークアイ≫等のスキルにより、

遠隔地の、人を攫えそうな村、盗めそうな宝等を発見する役割を担っている。


「サイ、知ってるだろ?前回使用した鷹はもうだめだ、新しいのと、触媒が足りねぇ」

「俺がボスなのを…、もう、忘れたのか…?」

「っ…。いや、覚えて、ますよ。しばらく待ってください。下準備がいるんだ」


カータスのスキルは有能だが、この辺りにこのくらいの規模の村がありそうだとか、

この辺りに宝石の気配がある、程度の事しかわからない。

その都度団員を派遣していたが、有益だった情報は1/4程度だ。

詐欺師として、看破や盗視のスキルを持っていたダンは、

思っていた以上に使える奴だったのかもしれない。


「触媒の入手を…、最優先にする…。他の者に命令しろ…」


カータスは、団員への指示はてめぇの仕事だろと内心毒づきつつ、

必要な素材を書き出したメモを配って回る。


「アラン…、まだ奴隷がいるな…いつ売るんだ…最低限の食費もタダではない…」

「ボスが売り先探してくれるんじゃないんスか?」

「………アルカンダルの奴隷商で良い。売ってこい」

「いや、あそこ最近渋いんスよ、まぁ、一旦話聞いて来ますけど」


アジト内を見回っていると、奴隷を捕まえている牢で、

3人の部下が1人の女を犯そうとしていた。

不妊の魔法が使えるセストはエルフの村で死んだ。

商品価値が落ちるかもしれない。


頭に血が昇ったサイは、衝動的に1人の部下の首を刎ねた。

女のすすり泣く声と、部下2人の謝罪を聞きながら、

優越感と怒りがその体を満たしていく。


(クソ共がっ、どいつもこいつも……)



――――――



「お主よ、これからどうする」

朝食をとりつつ、昨晩見つけた書類を改めて読みながら、ユリが問いかけて来た。


「ううむ。ここには流れで来たけど…、この先かぁ。

モンスター退治はざっくりと、

1.野生動物とかの、人ではないモンスターを倒す。

2.モンスター化している人を倒す」

「まぁ、そうだな」

「1.の場合は、例えば森とか、山や川とかに行って、まぁ、なんか探して倒すしかない」

「なんかふわふわしとるの」


「2.の場合は、また街や村を目指す、というのと、他にも、例えば盗賊だとか。

そういう人目に付かない場所を拠点としている人、いや、モンスターを探す」

「そうですね」


「個人的には盗賊や、この資料にあった呪術師集団とかが一番対処したいけど、手がかりが無い」

「私も…、そいつらをターゲットにしたいですね」

「ふむ、それでは、これなんかどうだ」


ユリは書類の中から1枚の紙を差し出してきた。


「?なにこれ」


[仕入れ先リスト。

アルカンダル、フォルネル、サーチスネーク、グレムズ、グリッチャー。

魔法薬と呪術による方法が確立して来たため、盗賊団は不要。準備を整え排除されたし。

サーチスネークのアジト、アルカンダルから西北西、アルシェ湖とハルゲンの中間部にある洞窟。

グレムズのアジト、ディーファンから東、アルダイト山脈の麓]



「知らない名前を色々出されると混乱するな…」

「そうか?」

「仕入れってのは、死体の事かな?…それにこのサーチスネークってのは知ってる、シイズ村に来た奴らだ」

「あやつらがそうか…確か、取り逃した奴がいると言っておったな。それほど遠くなさそうだし、行ってみるか?」

「フォルネルは街の名前だったっけ。後の2つも気になるけど、まぁ行ってみようか」

「行きましょう」


今、テフラさんの語気がなんだか強かった気がする。

やはり自分たちの村を襲った、盗賊という奴らを許せないのだろうか。

当然その気持ちは解るつもりだが、あまり殺意が増しすぎるとモンスター化を引き起こしそうで心配だ…。

だが、なんと声を掛けるべきなのか。

(怒らないで、気にしないで、落ち着いて?むしろ殺さないで?いや、絶対どれも違う…)

その後、結局3人とも無言のままハルゲンを後にした。




この辺りは既にシェーン大森林の一部となっており、樹木の背が高くなってきた。

方角に当たりを付けたとはいえ、盗賊のアジトなど見つかるものなのかと不安になってきた頃、

切り株が立ち並んでいる地帯を発見する。


「やはりな、これはおそらく、フローターで通行するための通路だな」

「なるほどね、つまりこれはアジトまでの道標(みちしるべ)、って事ね」

「そうなるのぅ。方角からして、こっちだな」



盗賊のアジトが目前だろう所まで迫り、ママルの心はざわついてくる。



「…………あの!」

「なんだ?」

「あ、いや、ユリちゃんじゃなくて、テフラさん!」

「どうしました?」

「その………、ここは、俺達に任せてくれませんか?」


テフラは、ピクと眉間にシワを寄せる。

「何故ですか?」

「…その、盗賊を相手にするテフラさんが、心配なので…」

「?負けませんよ、盗賊ごときに」

「…いや、そうじゃなくて、そこは心配してなくて…」

「何ですか?」


「テフラよ」

「ユリさん…?」

「わしもママルに賛成だ。お主は今、いささか殺意が高すぎるように思う」

「殺意…、まぁ、そうですね」

「モンスター化については話しただろ?わしらは、お主にそうなって欲しくはない」

「……………」

「解ってくれんかの」


「………お2人は、殺意もなく、殺してるんですか?」

「…いやっ、まず、その、多分、ユリちゃんは、直接は誰も殺してない……コープスを倒したくらいで。

…俺は、殺意は、ある。殺してやろうって思って、魔法を使ってる」

「だったら!」

「ち、違うんですっ。その、なんて言うか、俺は正直、代弁者気どりって言うか、

皆の恨みを俺が晴らしてやるんだ!みたいな、勝手な気持ちもあって。

それは絶対、ただの偽善だけど、悪ではない。そう信じてる」

「……………」

「恨みを晴らす事は、俺は悪い事だとは思わないから。

復讐だって、理由に寄っちゃするほうが良いに決まってる。

でも、ここの盗賊達は、テフラさんの、村の人達の仇なんですか?」

「解らないですね…、見てみるまでは」

「では、見て、違ったら、殺さないでください。それは俺がやります。

悪人を殺す事と、自分の憎しみを、関係ない悪人にぶつける事は、きっと違うから。って言うか、違ってないと、俺が困るっていうか…その」


「………………ふぅ………解りました」


「あ、ありがとうございます!」

「ありがとう」

「やめてください…、感謝なんて。私こそ、ちょっと頭に血が昇っていたみたい…。その、心配してくれて、ありがとうございます…」



テフラは少し恥ずかしそうに微笑むと、

そんな表情を見て、ママルとユリも笑みを浮かべた。

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