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32.ハルゲン村

「だから、それはホントごめんってばぁ」


昔は使われていたというのが解る程度には、

道があるという事が確認できる、荒れた公道を歩き、既に1時間以上。

ママルがユリにまた謝った。


「どうせお子様だからな、わしは。大人たちで楽しくしとりゃええ」


昨晩。子ども扱いされた事は勿論、直ぐに2人も部屋に戻って来るかと期待して少しの間待っていたし、

朝は2人共グースカ寝ていてユリが起こす羽目になったため、

なんだか仲間外れにあったような感じがして、ユリは今朝からご立腹だった。



(思った以上に傷つけちゃったな、これが思春期!いや、どうしよ)

「ユリさん、すみません…」

「お主はなんも悪くないでな、仲良くなれたようで、よい事だ」


ユリは方位磁石のような魔道具を手に、鼻息も荒く先頭を歩く。


(まずい、ジャンピング土下座でもしようかな…)

等と思案していると、テフラが少し大きい声を上げた。



「待ってください!お二人共、あれを」

テフラが前方を指して警戒する。


(路肩に撃ち捨てられている馬車?いや、あれがフローターか)

「ふむ…、慎重に近づいてみるで」


外見からは、そこそこ長い時間放置されていたような印象を受ける。

「なんでこんなところに放置してあるんだろう…」

「何か、酷い匂い…私が中を見てみますね」


テフラが幌を捲り中を確認する。


「うっ…」

ママルとユリも隙間から覗き込むと、中には腐乱した人間の死体が1体入っていた。


「こ、これは、一体どういう状況なのだ…?」

その死体は、腹部を剣で刺されただろう痕がある。

死体の他には何も見当たらない。


「ちょっと俺周囲を見てくるよ」

「ふむ、皆で手分けしよう」

フローターの反対側へ回ると、御者が座る席の汚れが目についた。


「古いけど、血痕かな…」

「こっちだ、来てみい」

ユリの元へ二人が駆け寄る。


「骨…?人間のですかね?」

「おそらくな、獣にでも襲われたか…」

「なんか、気味悪いな…」


「まぁ……気になるが、あまり時間を割きたくない、先を急ごう」

「そうですね」

(俺正直、こういうホラーみたいなのって苦手なんだよなぁ)


ちなみにフローター自体はそもそも魔法陣が欠損していて、動かすことはできなかった。



そのままもう2時間ほど歩くと、一軒の石造りの建物が見えた、2階建てだ。

「あれがハルゲン村?」

「位置的にはそうだと思うが、他に家が見当たらんぞ」

「いえ、あの建物の奥の方、窪地になっているみたいです…」

「ふむ、まずは、あの建物から見てみようかの」




石の建物の中へ入ると、床一面に巨大な魔法陣が描かれていた。

「これは…、なんの魔法だろう」

「解らんな」

「魔力流してみる?」

「まぁ、ありだが、何が起こるか解らんぞ。起動するかどうかもな」

「そ、それもそっか、えっと、こっちの部屋は…くさっ。トイレか…」

「2階も見てみましょう」


階段を登ると、椅子とテーブル、いくつかの保存食等、人が生活していたような気配が感じられる。

そして窓から村が一望できるようになっていた。

「監視部屋?」

「それも外敵から守るのではなく、村を監視するためのものっぽいのう」

「パッと見、村に人影は見えませんね…」



部屋の隅には、同じ形状の魔道具が大量に放置されている。

一つ手に取ってみると、ただ明かりを灯すだけの機能があるようだ。


1階へ戻ってみると、地下へと続く梯子がある事に気づく。

「行ってみよう」

「位置的に、村への通路になってそうですね」


照明の魔道具を1つ手に取り、地下へと降りるが、

室内には何もなく、木製の両開き扉が一つ、鉄柱の鍵が打ち付けてあるだけだ。


「な、なんか、気味悪いな」

「お主、びびっとるのか?」

「ユ、ユリちゃんは平気なんだ…」

「ふふん、こんなもん、怖くもなんともない」


「では、開けてみましょう」

「お、おう、テフラ、頼んだで」

ガコンと鉄柱をズラすと、扉が開かれる、その先もまた屋内だったが、木造住宅だ。


「ここからがハルゲン村って事かな」

「うむ、探索してみよう。何かの実験の痕跡等があればよいのだが」


3人が手分けして廃屋を探索する事になった。

(うぅ~ん…なんか不気味だけど、別に普通の家だなぁ)



ガタンッ


「ひっ!……な、なんの音だ?」

音をした方を確認しようと、隣の部屋を覗くと、下半身が損壊している人間の死体が蠢いていた。


「ゾ!ゾンビ!!!」

思わず声を上げると、ゾンビはこちらに気づき、這って近づいてくる。


「ちょっ、ちょっ、≪パラライズ:金縛り≫!」

「グルルゥアアア……」

「えっ、ちょっと!≪バニシック:燃焼≫!!≪ペイン:痛覚刺激≫!!」

「ア゛ア゛ア゛アアア…」

(止まらない!効いてない!!)


「おいおいおいおい!!」

幸い素早くはない、後退しながら考える。


(あっ、そうか)

「≪リリース:呪力反転≫≪アンデス:不死≫!!」


だが、ゾンビは意に介さず、速度を上げママルに飛び掛かった。

「おわああああ!!!!」


「≪廻穿脚(かいせんきゃく)≫!!」

背後から現れたテフラが、飛び後ろ回し蹴りのような攻撃で、ゾンビの頭を吹き飛ばす。


「なんですか、今のは?」

「あ、ありがとうございます!ぞ、ぞんっ」

「なんだ、どうした?」

「あ、ユリちゃん!ゾンビっ!」

「ぞんび?なんだそりゃ」

「う、動く死体!!」

「ふむ…調べてみい」

「あっ、そっか!」


首無しの死体に対して、≪アプライ:鑑定≫を唱えた。


●モンスター:人間:剣術士:ジェイムス Lv24 スキル:剣突 盾打 剣双撃

アルカンダルにて魔法薬実験の被検体をしていた

モンスター化している

弱点:斬


「魔法薬実験の被検体、だって…」

「ふむ…」

「あのクソ共………一体何を……」


「確か、【薬品】と【呪術】による兵士作成について、ハルゲンでの実験。だったかの」

「ゾンビ兵を作る実験をしてたって事か…」


「そのゾンビってのは何なのだ?」

「えっと、動く死体?アンデッド?人間を食べに来て、

噛まれたら感染して同じゾンビになっちゃう、みたいな」

「アンデッド…?いや、ちゃんと死んでおるではないか」

「え?ま、まぁ、確かに…。そうだ、なんか俺の魔法が効かなかった」

「ふむ…」

「もう少し、この村を調べましょうか」

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