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24.決行

レジスタンスは、城内の衛兵に内通者の仲間が居て、

ある程度の内部情報は知っていた。

市民が連れ去られた時、どこに連れて行かれているのかと言う事も。

仲間の命に直結する問題なので、情報を出し惜しまれていたのだ。

そしてその者が無事こちらに合流できるように通達するため、3日必要だった。



まず、捕まえた市民を謎の人物らが見定めて、気に入った人がいたらまたどこかに連れて行く、

こちらについては詳しくは解らないらしい。


そしてそれ以外の、つまり気に入られなかった大半の人たちは、

王族の個人的趣味で玩具にされるか、

この城の更に地下にある、裏闘技場と呼ばれる場所で、殺し合いを強制され、

その勝ち負けにクズどもが金を賭けて楽しむ、という流れだ。



要は、市民が前線に出されるような事は無く、

この街で連行された人の殆どは、城の地下にしかいない、ということ。

作戦とは至って単純明快であった。



レジスタンスの面々は全員既に集まっていて、ミルコが声を上げる。

「行くぞぉ!!」

「「「おぉぉぉぉぉ~~~!!!」」」



久しぶりにカース・ウルテマ装備一式に身を包んだママルを先頭に、

ゾロゾロと歩き出す、目指すは城。

一式装備効果のセットボーナスにより、ママルの戦闘力は更に増加している。

南側の街に面した城の扉など無いが、関係ない。



城の上部にある監視部屋から声が響く。

「てめぇら!!!なにやってんだ!!集会するな!!ひっ捕らえるぞ!!!!」

無視して歩を早めると、程なく鐘の音が聞こえた。


(城内にもう伝達されたか)

ママルが城の壁に向かって魔法を唱える。

「行きます!≪ラージマジックⅥ:魔法範囲超拡大≫≪マジックスフィア:魔力球≫」


ドゴン!!!と強烈な音と共に巨大な穴が開き、

そこからママル達が一気に雪崩れ込む。

上階は解らないが、1階の構造はある程度把握済みだ。



「今の音は!!!」「敵襲~~~!!」「て、てめぇらどっから!!」

城内の兵士数人に見つかるが、ママルは誰が内通者なのかは見ても解らないので、

片っ端から≪パラライズ:金縛り≫を唱えていくと、

背後から倒れている兵士を殺す音が聞こえてくる。


「ここか!」

いくつかの扉を蹴り破り、地下へと続く階段にたどり着いた。



本来は入れないはずの城の後ろからの奇襲、城側の対応は後手へ回っているため、

意外とまだ会う兵士の人数は少ない。


そのまま全員で地下へ、捕らえられた市民さえ確保出来たら勝ちだ。

見張りの数人を倒し、地下牢を見つけると≪マジックスフィア:魔力球≫を連打し、次々と錠を破壊していく。

この際もう本物の犯罪者が混ざっていても仕方がない。


「な、なんだ!何が起こってる!!」

「お前ら!脱出するぞ!武器を持て!!」

ミルコの声の元、ナイフや手製の槍などが配られていく。


次は闘技場だ、囚人も加え、更に大勢で一気に突入。

内通者をやってくれていた人は、レジスタンスの2名が肩を持ち引き摺って来たので解除魔法をかけた。



「なんでそっちなんだ!逃げるなら上だろ!」

「闘技場の人も助ける!今一人で上に行っても死ぬだけだ!力を貸せ!」

そんなやり取りが聞こえるが、構っていられない。



ドドドドドド!!!


「大勢の足音だ、兵士がもうここに来るぞ!」

「ミルコさん、後は任せました!」

「おう、ママル、頼んだぞ!」

「はい!ユリちゃん、頼んだよ!」

「まっかせろ!」


これからの作戦は、城のここから上全て、国王の所までママルが一人で殲滅する。

他の者は闘技場へ行き、捕まっているものを救出。

闘技場への入り口はこの地下牢からともう一つ、来賓(らいひん)用の大きな扉があるので、そこから脱出。

地下牢からの通路は狭いため、盾を持った兵士などに防がれたら大幅に時間を稼がれてしまい、

挟み撃ちにされかねないからだ。

つまり、この地下牢からの通路は、ママルが塞ぐ。


「っしゃオラ~~~!!」

壁や天井を殴り破壊して、瓦礫で道を塞いだ。


この時点でレジスタンス側はざっと30人を超える目算のため、

ただ逃げるだけなら可能だと思うが、戦闘になれば犠牲が出るのはまぬがれない。

出来るだけママルにヘイトが集まるように暴れる必要がある。


最初はママル自身も闘技場へ付いていき強行突破する手筈だったが、

やはりそれだと市民側を守りながら、大勢の兵士を相手に広範囲魔法を使うのが難しいのと、

国王達をとり逃す可能性が高いため、今のおとり作戦が提案されたのだ。


「いたぞ!侵入者だ!!!!」

地下牢の部屋から上がろうとした所を、早速発見された。


(別口から闘技場へ行かれるとまずい、まずは一気に上階へ出る!)


ママルは、階段通路の兵士たちに向かって、魔法を唱える。


「≪シュート:魔法直線範囲化≫……………≪バニシック:燃焼≫!!」



――


先日ひっそりと遠くから門番に≪アプライ:鑑定≫をしてみたところ、

2人の内1人はモンスターと言う事が解った。

やはり、必ず理性がなくなる訳ではないのだ。


それにこの城の奴らの蛮行は、嫌と言うほど聞かされた。

城の中にだって、良い人はいるかも、なんて言ったばかりに、

あいつはこうだと、あいつはあんなことをしてると。


ある官職は街に繰り出しては、

自分が目に付けた人間を、睨み付けて来たから不穏分子に違いないとして、

あらぬ疑いをかけては城の中や自室へと連れ込んでいた。


兵士達は気分次第で店の料金は踏み倒すし、

平気で女子供や老人でも殴り飛ばす。


兵隊長が酔って声をかけた女が、北側の酒場で働いていたミルコの奥さんで、

誘いを断られたからって、翌日の夜に複数の兵士を連れ家に現れ、

幼い娘が見ている前で、抗うミルコをリンチした後に奥さんを全員で姦し、

そのまま子供と奥さんを連れ去って行き、ミルコは南へ飛ばされた。


それ以外も、どれもこれも胸糞の悪い話ばかりだ。

当り前だが、この街の人口は減少の一途をたどっている。


――



だから、【こいつらは殺しても心は痛まない】ママルは自分にそう言い聞かせる。



兵士が次々と絶叫を上げ悶絶している。

呪術は無生物には効かない。鎧の内側は、きっと見るも無残な事になっているのだろう。

そんな奴らを、踏みつけるのも厭わず階段を駆け上がる。


死の叫びを聞きつけたのか、兵士が更に続々と集まって来た。


「≪サークル:魔法円範囲化≫≪ラージマジックⅥ:魔法範囲超拡大≫

≪アンガー:憤怒≫!オラ!こっちだクズ共!!!!全員ぶっ殺してやんよ!!!」


≪アンガー:憤怒≫はこの世界では、単に相手を怒らせる呪術魔法で、攻撃系よりも効果範囲が広い。


我ながら、らしくない啖呵を大声で切っている時、昔読んだヤンキー漫画を思い出した。

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