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198.帝都

車両のボックス席。その窓から外を眺める。


加速するまでそれなりに時間がかかった物の、

今は高速で景色が流れていく。

樹々や大地。たまに村を通り過ぎる。

そんな物を眺めていると、なんだか懐かしい気がしてくる。


景色そのものに対してなのか、前世を思い出しての事なのかは解らない。


「ママルちゃん!凄いわね!!」

「ね~」

「これはかなり便利ですね…」

「ですね~」


「ゆくゆくは、アルル大陸全土を走る様にしたいのだと伺っております」

「…随分気の長い計画ですが、出来たら凄いなぁ…」



それから1度だけ停車を挟み、夕刻頃に帝都へと辿り着いた。

かなり巨大な都市が築かれているが、その周囲にスラムと化している様な家々も見た。


「駅は3つだけかぁ」

「いえ、帝都の反対側へも続いておりますので」

「あ~、そりゃそうか」

「それでは、お宿へご案内致します。謁見及びご会談は明日以降となります。

詳しくは追ってお伝え致しますので」

「了解です」



駅を出ると、夕焼けに染まった美しい景色が見えた。

家々や、石で綺麗に舗装された道が、オレンジ色の光を反射している。


宿へ歩いている途中に日が沈み始めると、街灯が一斉に点灯した。


全体的に見ると、流石にプロテッドに及ぶほどではない。

列車はあっても、自動車の様な物はないし、

家々の建築様式はサンロック等とほぼ変わらない。


だが、それでも他の国とは一線を画している様な文明に映った。


行き交う人々は、時々ギョッとした様な視線をこちらへ向けるも、兵士が連れて歩いているのを視認すると、そのまま忙しなくどこかへと歩いて行く。



宿となっている建物は3階建てで、その最上階へと案内されると、

ママルは大きな荷物を下ろしながらボヤいた。


「…なんだかなぁ…」

「どうしました?」

「いや……、敵国。その総本山!みたいに思ってましたが、…当たり前だけど、ここで普通に生きてる人達も、沢山いるんだよなぁ、って…」

「…まぁ…、そうですね」




――翌朝。室内に運ばれて来た朝食を摂って少しした頃。

クラストが顔を出し、早速皇帝の元に向かうのだと言う。


「申し訳ありませんが、ここからはママル様お1人でのご同行をお願い致します」

「……まぁ、そうなる気がしてました」


「納得いきません、と言っても、どうにもなりませんよね。ママルさん、気を付けて…」

「クラストちゃ…さん!!皇帝さんに言っておいて!ママルちゃんとっても強いんだから!戦っても意味ないよって!」


「そっ……それでは、下で待っておりますので、ご準備が出来ましたらお越しください」



ママルは諸々の準備を整え、クラストに合流し、

帝都城へと案内されて行く。


カース・ウルテマ装備一式に身を包んだ。

そうする事で、その表情や手元を隠せる事が良い。


巨大な城門を抜け、廊下を歩き、城内の兵士等に数々な嫌悪や奇異の目に晒される事約15分。ようやく王の間へと辿り着いた。


だだっ広い室内の周囲にはズラりと並んだ兵士達。


その中心の玉座に腰掛ける皇帝が声を発した。



「貴殿がそうか…、クラスト、お前は下がれ」

「…畏まりました」


なんとも緊張感のある雰囲気だ。

ママルは少し身震いしそうになる体に力を込める。


「さて、……ママルとやら、緊張しているのか?」

「……どうでもいいだろ。……それより、何の用で呼んだ」

「おっと…、まぁ良いか…。その口調程度で不敬だなんだと騒ぐことはしないさ。

だが、顔くらいは見せてくれないか?」

「……………」

「ふむ。まぁ…、良いがな………。それで、アルタビエレ。知っているだろ?」

「っ…、やっぱそうか…」

「やはり、と言う事は、成程。奴の残滓と会話できる≪オムニプレゼンス:契約召喚≫の事まで知っていると」

「……そうだ」

「勘違いしないで欲しいんだが、私は奴と契約はしていない。嫌いだったからな、あいつの事は。家臣に契約者がいてな、そこからの又聞きさ」

「……それで?」


「まずは…、そうだな。私はフェアに話がしたい。だから、ルールを設けよう」

「……何を」

「この部屋において、一切の攻撃、暴力を禁ずる。…どうだろうか?」

「………なんだ?そんな口約束が欲しいのか?」

「そうだ。この場の者、皆が聞いているからな。そして貴殿は恐らく、約束したら守るタイプだろう」

「……解ってるじゃねぇか。だから約束はしない」

「…………………つまり私に対して、攻撃の意志がある。という話になるのが解っているのか?」

「………この話し合いの結果によってはそうなる」

「フハッ!!中々……。ではこの会談は終わりだ。遠路はるばるご苦労だったな」

「…は?」

「私は、貴殿の強さを知っている。だからこの約束が成されない限り、ここから進む事は怖くて仕方がない」

「………………解ったよ…、とりあえず、今の所は、約束してやる」

「≪エスタブリッシュ:規律制定≫」


皇帝は突如スキルを使用した。


「!!お前……」

「すまないな、私はスキルでルールを作る事が出来る。これでお互いに攻撃は出来ない。ふぅ…、気が気じゃなかったぞ…」

「……………」

「騙し討ちをされたと思うか?だが、私の心境も考えてみて欲しい……」

「<アカーラ:金縛法>……」


案の定、スキルは発動しない。

(拘束でさえも攻撃とみなされるか…)


「おいおい、試すにしてもいきなり…」

「≪アプライ:鑑定≫」

「何ッ!」



●人間:ルーラー:アレウス=ディクテイト Lv156 エスタブリッシュ その他不明

エンパル帝国の皇帝。

その他詳細不明。


「…これで騙した事はチャラにしてやる」

「………今のスキルの詳細は?」

「…お前がおそらく、ハイクラス、もしくはレジェンドクラス辺りのルーラーと呼ばれる物である事。そして、モンスターじゃない事が解った」

「…素直に答えるとはな…、そして、私がモンスター化を知っている事も確かめるための回答か?」

「……ああ…でも、嘘かもな?」

「何?」

「ルールを作れるんだろ?お互い嘘を付けなくしよう…」

「……フッ…ハッハッハ!解った、良いだろう。…貴殿のルールを受け入れ制定する。この部屋において、嘘をつくことは出来ない!≪エスタブリッシュ:規律制定≫!…さぁ、試しに何か嘘でもついてみろ」


「…………………今朝は、…パンを食べた」

「面白いだろ?」


(白米、と言おうとしたのに、正直にパンと言っていた、なんだこれ…、

と言うか、この手の効果が俺に完全に通っている…。

やっぱレジェンドクラスで確定か…?マジで強いな…)


「だが、俺に効いているからと言って、お前にも有効だという保証はない…」

「……呆れるな。スキルとは、そこまで万能ではない。この様な無体な力を、一方的に強制できるわけがないだろう」

「……………まぁ、そうかもな」


「では…………、待たせてしまったが、話を始めようか。閻魔王ママルよ」

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