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197.ママルとクラスト

ママルは我ながら、なんて都合のいい言葉を吐いてしまったのだと思っていた。


自分が出来ないなら人に頼れと。

それは正に自分が出来なかった事のくせに。


(……そうか、冷静に考えてみれば…。俺が昨日まで思ってた事。

戦って、殺せなくて、そういう中途半端さ。

なのにこの人自身が、そういう生き方こそを良しとしている。

真っすぐな目で…。俺が嫌だと感じた生き方を肯定している気がするから…。

でも、まぁ、ちょっと言葉が強すぎたかもしれないな……。

あの後、案内以外の言葉を言わなくなっちゃったしな……。

実際、良い人ではあるんだから、あんな言い方しなくても良かったか…)



パレルーアの街の宿で目覚めたママルは、仲間達とクラストの4人で、

その地下にある食事場でパンを齧りながら反省していた。


近くで同じように食事しているクラストを横目に見る。


「…………………あの」

「……はい。いかがされましたか…」

「昨日はすみません…。俺、なんか結構口悪くなっちゃう時あって…」

「いえ。…お気になさらず」


「ママルさん、怒ってるとそうなりますよね」

「そうですね……気を付けます…ほんと…」


「私が、怒らせてしまったと言う事でしょうか…?」

「……ま、まぁ……」

「……私のやり方は、やはり、それ程に間違っていると思われるのですね…」

「……いや、そういう訳じゃ…」

「?……何故ですか?」

「間違っているとは思ってなくて。クラストさんのやり方が、それで成り立つなら一番良い。でも成り立たないだろ。と思っている。と言う事…です」

「…まさに昨日の盗賊の様に、と……」

「…はい」

「……………………」


それからまた暫く無言の食事が続いた。



その後、食事を終えて街の外へ出て歩いている。

その時奇妙な音が聞こえて来た。

この音には、何故か聞き覚えがある。そう思って目を向けたママルは驚愕した。



「!!電車?!!いや、列車と言えば良いか…て、鉄道があるのか?!」


数両の列車がガタンゴトンと音を立て、

今パレルーアの街へ入って行く様が見えた。


「…何ですか今の?凄かったですね」

「あんなに大きな物が、どうやって動いているのかしら…」

「昨日は空も暗い中、宿へ一直線だったから気づかなかったのか…?」


「夜は動いておりませんし、日に数本しか走っていない為、気づかなくても不思議ではありません」

「…って、てか、ならアレで帝都に向かったら良いんじゃ…?流石に繋がってますよね?」

「はい……ですがロジャーソンがおりますので」

「…あ、あぁ、そりゃ馬は駄目か…」

「いえ。大丈夫なのですが………、それよりも、良く御存知ですね…」

「…ま、まぁ」

「……………そうですね。解りました。それでは列車にて、帝都ポールサンダニアへと向かいましょう。それならば、今日中に辿り着けるかと思いますので」



パレルーアの街中へと引き返すと、早速駅へと向かう。

中でみた列車は、殆ど箱を連結させている様な物だった。


クラストがチケットを購入し、ママル達の元に戻って来る。

「出発は約1時間後となりますので、それまでご自由に。と言いたいところですが、やはり私から離れての行動は慎むよう、お願い申し上げます」

「はい…あの、どうして最初からこれに乗ろうとしなかったんですか?」

「………………」

「まぁ、言いたくない理由があるなら、…別に良いんですけど」

「…何故、今朝から急に敬語で話して下さるのですか?」

「……相手に、ある程度合わせた口調の方が、楽だからです」

「…これまでは無理をしていたと言う事でしょうか?」

「…まぁ、そうですね」

「何故…、いえ…、距離を保とうとなさっていたと…」

「…まだ一応、敵ですからね」

「…では何故、距離を保たなくても良いと判断なされたのですか?」

「………もし、今後の流れで、俺達とクラストさんが戦わなくちゃならなくなったとして。…どうしますか?」

「…………解りません」

「…クラストさんは多分、俺達に向かって剣を振れない」

「…………………」

「そして俺達も、多分クラストさんを攻撃できない」

「!!……そう…でしたか」



それからクラストは、また暫く無言で何かを考えた後に語り始めた。


「なぜ今回、私が1人であなた方の元へ来たかお解りでしょうか」

「…いえ」

「………今回の件で私が陛下に呼び出された時、陛下はこう仰いました。

お前が丁度いいじゃないか。今すぐ連れて来るんだ。と」

「…丁度いい?…何がですか?」

「その真意は、解りかねます。ですが、ママル様の性格を知った今、思い当たるふしがあります。それは、私であれば敵対せず、連れてくることが出来ると」

「あ~。まぁ……」

「つまり陛下は、ママル様のそう言う性格をも把握していた、と言う事となります」

「…確かに。まぁ、大体想像ついてましたけどね」

「…………罠ではないでしょうか」

「お、俺の肩を持ってくれてるんですか?」

「……………」

「でも、大丈夫です。それは仲間内でちゃんと話し合ったので」

「…そうでしたか」

「…ってか、じゃあ列車使おうとしなかったのも、何と言うか、時間が欲しかった。みたいな?俺達の事を把握するための時間って言うか…」

「そう。なりますね」

「最初は馬で1日で連れてくって言ってたのに…」

「…あの時はまだ、私の分隊を壊滅させた人達。くらいの認識でしたから…」

「…じゃあ、今はどう思ってるんですか?」

「………私は、あなた方の行いを是とする事は出来ません。ですが、あなた方が、弱きを助けようと動いている事が、解ってしまいましたから…」

「……なるほどね」


それから暫く雑談が続いた。


主に列車について。その仕組みや構造何かを聞いていく。

先頭車両には当然運転席、それと巨大な魔導核があり、その魔力でもって車輪を回転させている。

その簡単すぎる仕組みは、プロテッドのロテーターを想起させた。

だが回転の魔法ではなく。爆発の魔法によって動力を得ているらしく、

それ故にこれ程巨大な物を動かせるんだとか。


超重量を長時間動かすための巨大な魔導核を魔力で満たすためには、

非常に多くの魔力を込めなければならない。

そのため、魔法士の間では人気のバイトと化しているんだとか。


人が乗る用の車両が3。家畜が乗る用の車両が1。

物資を運ぶ用の車両が2。


時々によって、家畜用や物資用の車両に人が乗る場合もあるし、

逆に人が乗る車両が物資で満たされることもある。



そんな雑談は、列車が出発してもなお続いていた。


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