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176.仮装

ママル達は、新たな村を見つけた。

一行はその村内に、ママルを先頭として入って行く。


すると、すぐに村人のオーガが近寄り声をかけて来た。


「おい、お前ら、どっから来た…?獣人なんて珍しい…」

その顔は、如何にも怪訝な表情をしている。

そんな村人にママルが応える。


「あの、この子、コムラちゃんを、戦士の元に送り届ける必要がありまして…、

それで、中央ってどの辺りですか?近いです?」


ママルはそんな事を言いながら、少し大げさに耳や尻尾を動かす。



「…そりゃお前……、つうか、お前は何だ?人間みたいな顔しやがって…」

「いや、獣人ですケ~ド…」

「見りゃ解る…、この世にゃ、色々いるんだな…………、後ろの2人は?」


そう言って村人は、ママル達の後方につけるユリとメイリーを指した。

2人は、ケープで顔まで覆い隠している。


そして2人はそのフードをおろして顔を見せる。




「お、俺と一緒ですよ、珍しいので、普段は隠してて…」

「なるほどな、まぁ、良い、それで、なんだったか?」



ユリとメイリーは、デザートガンウルフの亡骸を使い、即席で作った犬耳カチューシャと尻尾を付けていた。

それらはある程度は腐らない様に、燻したりして多少加工してある。

人間の耳は、きちんと髪の毛で隠しきれるようにした。


一見するととても可愛らしいが、実際は本物の狼の耳を付けているため、

考えるとちょっと不気味だ。


2人はまた直ぐフードをかぶり直した。



「中央って、近いですか?」

「あ、あぁ、ここからならそう遠くは無いが…東南東の方に牛車で6時間も行けば…」

「ありがとうございます、あと、ここに宿ってありますかね?」

「嬢ちゃん、子供なのに随分しっかりしてんな…、いや、宿ならある、あそこだ」


そうして村人が指さした先の家屋に入り、

無事に宿をとることが出来た。


風呂トイレと、簡素なテーブルと椅子。

他には2段ベッドが2つあるだけの部屋で、普段はそれぞれ見知らぬ人同士が使ったりする部屋をママル達5人で貸し切った形だ。

ベッドの数が一つ足りないが、サイズ的にママルとコムラで使うという話になった。


早速中央に荷物をおろし、ベッドに腰掛ける。


「ふぅ~、うまく行ったね」

「……テフラの案を否定したい訳ではないのだが、これはよいのだろうか…」

「そうよね…」

「人を騙す様な事をしているのは勿論、この狼たちの亡骸にも、なんとも申し訳なくなってしまってのう」


「…必要な事だ。と言う考えが重要ですよ。それこそ食事に代表される様に。

必要な事であれば許される。と言うと語弊がありますが……、程度問題と言いますか…、そうでなければ、私達の衣服一つとっても成り立ちませんし」

「………まぁ、そうか」


「俺も…、今回に限って言うなら野宿でも良かったかもしれないけど、今後もこういう手が使えるって解ったのは重要だと思うな」

「…お主らの様に割り切れたらよいのだがの…」

「…いや、完全に割り切れてるワケじゃないよ」

「っ……すまん。いかんな…最近どうにも、良くない言葉が口を突いて出る様だ」

「ストレスたまってるんじゃない?」

「……そうかもしれんのう」

「ま、とりあえず飯買って来るわ。追加料金で出してくれるって、さっきカウンターのトコで見たから」

「頼むでな…、あと、すまんな、テフラ」

「いえ…、そういう事。ちゃんと気にすんだなって思ってちょっと嬉しいですよ」



その夜。

それぞれがもうベッドで寝る姿勢だ。

暗がりの中でママルが雑談をふる。


「順調に行けば明日には中央に着きそうだね」

「…だな、朝に立てば、夕刻頃には着くのではないかの」

「夕刻かぁ、…牛車ってやっぱ遅いのかな?」


「だと思いますよ、なので、私達なら普通に歩いて行っても良いかと」

「御者とずっと一緒におるのも、わしらが不安だでな」


「確かに………。テンザン国の中で、多分一番でっかい場所っぽいし、ちょっと楽しみだな」

「中央でも、わしらの仮装が通ればよいのだが…」

「そうよね……」

「まぁ、一応2人にはあんまり目立たない様にしてもらえれば、大丈夫じゃないかなぁ」

「ふふ、バレたら逃げちゃいましょう」

「はは、確かに、それなら簡単そうですね」

「うむ……、後は、戦士が居る場所でコムラが暮らせるように、何か村長だとかに話を通さねばならぬが、そういうのはお主らに任せた方が良さそうだのう」


「だね…戦士、流石に気になるなぁ、角が2本なんだっけ?」

「……うん」

「コムラちゃんは見た事あるの?」

「……ない」

「そうなんだ…」

(親とかから聞いた情報程度って感じか)


それから、テンザン国とエンパル国の現状を考えてみる。

コムラの手前、口にし辛いなと思い、そこで雑談は終わった。



(宣戦布告までしてるって…、どうして争うんだろうな…。

そりゃ、少なくとも、コムラちゃんの件を完全に鵜呑みにするなら、

その村を襲った事自体は、許せないと思う。

でも…、それはそれとして、どんな理由で戦になってるのか解らない。

……だから、どちらに肩入れしようって話も、現状では出来ない。

だからこそ、まず中央に行ったら、そういう情報を集めるか…)


ママルはそんな事を思案しながら、隣で眠るコムラに目を向ける。

連日歩き通して疲れているのだろう事もあってか、

直ぐに眠ってしまった様だ。


しかしその顔色は、どこか苦しそうな。辛そうなままだった。



――――――――


アレウスが、マージェスを呼び出し事情を話した後、

2度目の会談が行われていた。



「で、どうだった」

「いましたよ、6人」

「6人か…、今ワールドバース、と言うか、残る呪術師は貴殿を含めて9人……、

逆に残りの3人はなぜ受けなかったのか…何をしているんだ?」

「処しました」

「…は?」

「アルビエレ様の残滓を、受け入れる事を拒否してたんです。

そんなものは、当然万死に値します」

「………………………………私も拒否したがな」

「それは承知の上ですよ、立場が違いますからね。ワールドバース。新たな世界の誕生を夢見た我々と、今世を治めたいと言うあなたとでは、当然ね」

「立場が違うだけで、許すと?」

「それはそうです。ワールドバースの面々は、アルビエレ様を受け入れて然るべき、外野がどう思うかは、別の話です」

「………忖度だな」

「………そう思いますか?」

「貴殿らワールドバースは、アルビエレと言う頭を失った…、

いくら力があるとはいえ、人間だ。金が無ければ満足な生活は送れないだろ」

「…………勿論、お金は必要ですよね、どんな時でも。…例えば我々が農作物を育てるなんて、想像するだけで可笑しいですからね」

「だから今、我がエンパル帝国の下に預かるような立場さえ、甘んじて受け入れている」

「はい」

「だから私がアルビエレを拒否した事をも容認する、その態度は忖度だ」

「いいえ」

「…ちっ…、マージェス、正直に言え、今、何を望んでいるのか」

「…………あなた、使う気でしょう、悪魔を」

「………当然、だからこそ改めて貴殿に声をかけたのだ」

「であれば、変わらないのです。我々の目的は…、悪魔を、高級や特級に類する悪魔をこの地に降ろし、我々個々の望みを叶える。そこへの道は、現状エンパル帝国に与する道こそが最も解り易い」

「……………………」

「それに、御免ですよ、あなたと戦うのなんか、面倒くさい」

「…こっちのセリフだ」

「私がここに来た事こそが、証明になっているのだと、思っては頂けませんかね」

「…………現在のワールドバース、そのトップで居る自負はあるのだな」

「結果的に、ですがね。私は、馬鹿じゃないので」

「…………それで、魔人化を容認しそうな奴は、何人いる」

「………そこまでご存じなのですね」

「……私は、アルタビエレとは特別仲が良かったからな」


「……………アレって結局、本来の悪魔の力からすると弱いんですよねぇ」

「……質問に答えろ」

「…皆さん、それぞれ、叶えたい願いがあるんですよ。

なのに、自身を変質させてしまっては意味がない」

「………同じ質問をさせる気か?」

「………はぁ…。少なくとも1人。強要出来そうなのが1人。その程度です」

「…ふっ。いいじゃないか」


「…良くないんですよ」

「なぜだ」

「悪魔憑きは、アルタビエレ様がタブーにしていたのです」

「悪魔憑き?なぜ急にそんな話を」


「……一般的には、モンスター化した人に使われている言葉です。

ですから、あえて魔人を悪魔憑きと呼ぶ様にしていました」

「………………」

「魔人化を行うスキルは、およそ、ほぼ全ての人が習得可能なのですよ」

「………およそほぼ全てとは、バカみたいな言い回しだな」

「…はぁ……。邪心がある人であれば、誰でもと言う事です。ですから、

およそ、ほぼ、全て。ご理解頂けましたか?」


「……そう言う事か。魔人化と言う効果が知れ渡れば、自力で習得する奴らが出て来てもおかしくないと」

「そうです」

「だが奴は、世界が荒れる事は、望むところだったんじゃないのか?」

「人と悪魔の融合は、呪力を大きく消費します。ここアルル大陸で行われれば、それだけ、ここでの、高級以上の悪魔召喚が遠ざかる」

「…ふむ…………」

「我々の最終目標と反する事です。ですので、≪デモリッション:悪魔憑依≫を既に会得している方にも、使わせたくはないのですよ。

さらに魔人となった者は、低級悪魔を人の身に降ろさせ部下とする≪レギオン:徴兵令≫と言うスキルも獲得できます。

1人の魔人から、一体どれほどの魔人が生まれ、どれほどの呪力を消費する事になるやら」


「………………いや、おい、おかしい。それならば、貴殿が先程言った、

私が悪魔を使う気だから協力しているという言葉と反するだろう」

「…………………反しません」

「……何故だ」

「……………あなたと仲良しのお爺ちゃん。アレ、召喚術士でしょう?≪デモリッション:悪魔憑依≫ではなく、≪デモニング:悪魔召喚≫を覚えさえ、使わせて下さい。それが、我々ワールドバースが望むところです」

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