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175.強食

翌朝、また皆で歩き出した所、テフラが謝った。


「すみません…」


「いえ、まぁ、なんとかなりますよ」

「中央と言うくらいだからのう、この地図で言う、テンザン国の中心へ向かって歩けば、いずれ辿り着くんでないかの」

「そうそう」


「ナン村では、絶対、まず初めに情報を集めるべきでした…、話の流れでついムっときちゃって…」

「とりあえず、次の村があればそこで聞いてみましょ?」

「だな、わしらの事を黙ったままであれば、話を聞くくらいは出来そうだしのう」


「…問題は、中央ってのに着いた時、どうするかかなぁ…」

「うぅむ……、状況によるが、最悪わしらは外で待機でも良いがのう」

「まぁ、戦士にさえ会えたら目的達成なわけだしね。そこでコムラちゃんを引き取って貰ったら、南の方がエンパルに襲われてるらしいし、そっち行くかぁ…」

「…………だな」

「……以前、シーグランとグラスエスが戦争してるって聞いて、

実際は、まぁ俺が思ってたのとは違ったワケだけど。

今回はマジっぽいんだよなぁ……憂鬱だわ」


ママルのボヤきを聞いて、コムラが話しかけて来た。


「ねぇ…ママルは、どうして?」

「…えっ…と……?」

「…南に行くって」

「あぁ、そう言う事か。一応さ、一方的に奪われてるんだとしたら、見過ごせないし…」

「…戦いに行くの?」

「まぁ…そうなるねぇ…」

「し、死んじゃうよ…」

「………大丈夫。死なないよ」

「……ママルが、お父さんとお母さんの仇を討ってくれたんだよね?」

「あぁ、呪界の事か、まぁ、そうなるのかな…、呪界を作ってた悪魔をやっつけただけなんだけど」


「ちなみに、弱っていたコムラを回復させてくれたのもママルさんですよ」

「そ、そうなの?」

「…………いや…、でもあの時は、ユリちゃんがちゃんと守ってくれてたのもあるし」

「わ、わしはそれほど…」


実際ユリ自身、弱り切ったツタの攻撃から少し守った程度の認識で、

何かを成し遂げた様な感覚はないが、

そんなユリに向かってママルはアイコンタクトを飛ばす。

(いーから!乗っかって!!良い印象与えたいんでしょ!!)



「ま、まぁ…そうだな…、悪魔の蠢くツタの攻撃を、防いだりはしたでな…」


「そ、そうなんだ……………」

「それに、呪界の悪魔を倒せたの、俺だけじゃなくて皆のおかげだよ。

ここに居る人達と、あと竜人のクラレンドさんと、ドラゴンのヴリトラさんと」

「……………………………」


ママルはコムラを横目で見ると、なんとも言えない様な表情を浮かべていた。



コムラは、村を襲われ、多くの死を目の当たりにした。

そうして逃げた先の呪界で両親まで亡くしてしまった。


だからこそ、噂に聞いた戦士に縋っているのだ。


誰かに頼りたいと。守って欲しいと。死にたくないと。


年端もいかない子供にとって、目にした凄惨な光景は、一体どれほどのトラウマを受け付けられたのだろう。


今だって、少しでも思い返すと、全身が震えあがり、涙が込み上げて来てしまう。

友達や両親の顔を思い浮かべると、胸の奥が張り裂けそうになる。



「ぅ………ぅぅぅ…………」

「………大丈夫、戦士の元に、ちゃんと送り届けるからさ」

「………うん」

「それまでは、絶対俺達が守るから、心配しなくて良いよ」

「………うん」


そうしてママルはコムラの手をとった。


この世界に来て、改めて思っていたのだ。

誰かと手を繋ぐと言う行為は、心の奥が、どこか安心すると言う事を。


「行こう」

「………………うんっ!」



先頭を歩くママル達を見て、テフラが言う。


「ふふ…とられちゃいました」

「……その割に、嬉しそうではないか?」

「勿論」

「私も仲良くなりたいなぁ……」




――


暫く歩いていると、気づけば周囲を動物に取り囲まれている事に気づいた。

ママル達から10m程距離をとりつつも付いて来ている。


皆は歩幅を合わせて集まりつつも、その歩みは止めずにテフラが声を出す。


「多分、7匹ですね。デザートガンウルフ。だったっけかな…」

「狼か…狙われてる感じか…」

「皆モンスターよ…。動物のモンスターは、なんだか見るととっても悲しいわ…」


「なるほど………。私が狩って来ます」

「えっ…」

「違ったらいいんですけど…多分皆、私が居る中で狼を殺すの嫌でしょうから」


(………感覚的には、俺が人間だった時に、猿を狩るのって嫌じゃないか、くらいの感じか?…………確かに、嫌だな。ある意味、犬猫よりも見たくないかもしれない。…ん?いや、だからこそ)


「いや、だからこそ、テフラさんが一番嫌でしょ…」

「いえ、私達は元々狩猟民族ですから。それほど」

「な、なるほど……」


気が付けば、コムラと繋いでる手は、強く強く握られている。


「コムラちゃん、大丈夫だって、俺達マジで強いから」

「……………………………」

「じゃあ、テフラさん、お願いします。……………コムラちゃん、テフラさんを良く見ておいて」


正直、動物が殺される場面を子供に見せるなんてのは、

少なくともママルの感覚からすると、どうかしている。


それでも、それよりも、テフラの強さをその目に焼き付ける事の方が大事なんじゃないかと思った。



「行って来ます。一瞬ですよ。見逃さないで下さい……≪空刹≫…。≪瞬爪≫」


モノの10秒も経たないうちに、7匹のデザートガンウルフは首が綺麗に切断された。



「ふぅ…肉食獣の肉はそれほど美味しく食べられないと思いますが、確保しますか?」

「……そ、そうだな…、折角の命を無駄にすると言うのも気が引けるでな…」

「別に私達が食べなくても、無駄にはなりませんよ。様々な動物や虫が捕食するでしょうし。ほら、早速鷹が降りて来そう……いや、それより、名案を思い付きました」

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