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15.巫女

コンコン

コンコンコン


「ママルさ~ん、起きてますか~?」


扉の向こうから聞こえる声に目が覚めた。

(!何時だ?!いや、時間とかあるのか?知らんけど!)


「は~~い!」

答えながら扉を開けると、声の主のルゥが目を見開いた。

「ママルさん!その服は?!」

「え?あ!寝る前に着替えたんですよ」

ママルは折角ベッドで寝る機会だしと、少しでも寝心地を良くしようと寝巻装備に着替えていたのだった。


「そんな荷物、持ってましたっけ?」

「あ~…」

(そりゃそうだ、変に不審がられても何だし、これは見せた方が早いかな)


そう思うと、目の前でアイテム袋を使っての早着替えを披露して見せた。

「わ~~~、凄い魔法ですね!」

「ま、まぁね、じゃあ折角だし、今日はこの装備にしようかな」

と街中用のオシャレ装備に着替える。

この装備を身に着けるのは転生して来た直後以来だ。


「わっ、とっても可愛いですよ!」

「ありがとうございます」

アドルミアで試行錯誤していた自分のセンスを褒められたようで嬉しくなる。


「それで、ルゥさん、何か用事でも」

「あっ!そうでした!村の皆が話したいって、手に空きがある人たちだけですが、

ババ様、村長の所に集まってるので、良かったら是非」

「あ、了解です、行きましょう」


外に出ると、日は真上に昇っていた。

「昼すぎかな。大分寝たなぁ…」

「ふふ、疲れてたんですね。儀式は午前の間に終わらせてしまいましたけど、良かったですか?」

「あ、はい、全然大丈夫です」




村長宅には数人の村人が集まっていた。

「ようこそお越しくださいました」

扉を開けると、直ぐに村長が挨拶をしてきて、周囲の村人は頭を下げる。

同時に俺の見た目の変わりように驚いてるような雰囲気も感じた。


「あっ、いえいえ、全然!」

「ママル殿の事情はルゥから多少伺いました、大変じゃったようで」

「あっ、いえっ、全然平気です!」

数人のエルフに囲まれて、まるで多対一の面接でも受けているような気分になり、

妙に緊張して同じような事ばかり言ってしまう。

「それで、いくつか伺いたいんじゃが…」


盗賊の中で村長を拘束した奴が見当たらなかったので、どこかで見ていないか、という事と、

この村をどうやって発見したのか。そして俺自身が何者なのかと言う事を改めて聞きたかったようだが、

そのどれも真っ当に答えることが出来なかった。


「すみません、お力になれなくて」

「いやっ、とんでもない、既に大きなお力はお借りしましたゆえ、

改めて昨晩の非礼を、この村を代表してお詫びしたい。申し訳ない」

するとまたもやその場の全員が頭を下げてくる。


「いやっ、そのっ、ありがとうございます…」

「それで、もう一人会ってもらいたい人がおるんじゃが」

「構いませんよ」

「この村には巫女がおっての。神様の言葉を話せるんじゃが、

その神託で、ママル殿が現れることを予見されていたのじゃ」

「えっ!すごい!神様は未来が見れるんですか?」

「そんな話は聞いたことがないのじゃが、どうじゃろうなぁ…

それで、その巫女に会っていただきたいのじゃ」

「解りました!是非」

(なんとも興味をそそられる話だ)



「ハン、案内してさしあげるのじゃ」

「承知しました!」

「ババ様、私も着いて行って良いですか?」

「うむ…、ママル殿の迷惑にならなければ良いのじゃが」

と村長がこちらをチラリと見てくる。

「もちろん、ルゥさんも一緒に行きましょう」



ハンの案内の元歩き始めると、ルゥが口を開く。

「巫女のユリちゃんとは、私結構仲良いんです」

「あ、それで会いたかったとかですか?」

「まぁ、もちろんそれもありますよ」

「ルゥ、お前いつの間にママルさんとそんな親しげに」

「ふふっ、女同士の秘密ですよ、ね?」

「ぐぬ…。私がママルさんをお導きしたのに!」

(…あぁ、ハンさんは何と言うか、偶然俺に会った流れに運命的な物を感じて、

それで妙にずっと張り切ってるのか。勇者を発見した!的な?

いや、俺は絶対そんなのじゃないけど、救世主とか言ってた気がするしなぁ)


「でも実際ハンさんが来てくれなかったら、

今回の騒動にも気づかないままだったかもしれないので感謝してますよ」

「ありがとうございます!!」


すると、横を歩いていたルゥがごく自然に手を繋いできて、ビクッと一瞬体を強張らせてしまう。

「あっ、ごめんなさい!なんか、リンと歩いてる時みたいな気分になっちゃって」

「あ、妹さんの。はは、全然構いませんよ」

「じゃあ良かったです」

構わないと言う言葉をどう受け取ったのか、ルゥはそのまま手を離さなかった。

(ぐ…なんか恥ずかしい…、でも、こうなった以上振りほどく訳にもいかないよなぁ)



丁度ママルがこの村の結界に入って来た道の方まで着くと、ハンが急に立ち止まる。

道を逸れ、一見何もない森の一部に足を踏み入れ数メートル。

「こちらです」

ハンが樹の中に吸い込まれるように見えた。

「えっ!」

「大丈夫ですよ、このまま進んでください」


ルゥに言われるがまま、樹にぶつかるように踏み出すと、

急に視界が開け、目の前には社が一軒建っていた。

「ここは空間を圧縮した上に隠蔽する魔法をかけられている、特別な地なのです」

「ふふっ、私も最初来た時はびっくりしたなぁ」

「へ~~~~!すっご~~!」

(デザインがめちゃくちゃニッポン!!)


「ユリ様!神託の通り、救世主様をお連れしました!」

(その救世主様ってのやめて欲しいんだよなぁ)



「あい~~~、上がって~」

なんとも気の抜けた声を聞き、そのまま正面から靴を脱ぎ上がる。

この時ルゥとの手繋ぎが解消され、少し寂しい気もした。


巫女装束に身を包んだ少女が、こちらに背を向け正座している。

「ユリちゃん、この前ぶりだね」

「お~、ルゥ、この前ぶり~」

巫女は軽口を叩きながらこちらへ向きなおす。エルフではない、人間だ。

歳は、中学生くらいだろうか、肩に届くくらいの髪の黒は深く、

外の光を受けて藍色に輝いてるように見えた。

「あ、どうも、はじめまして、ママルと言います」

「お主がそうか、まぁ皆座れ」


つい流れで正座で座ってしまったが、横でルゥとハンが結構楽に座っているのを見て、体育座りに姿勢をなおす。

「さて、まぁここまで来てくれたのに何だが、わしは何も知らんぞ」

「えっ」

「お主の事を知っとるのは神様なんよ。わしは神様の言葉を話せるからのう」

「え、っと、つまり?」

「ちょっと待っておれ、こちらから呼びかけるのは久々だでな、

これから降ろすから、したら神様と話してみ」


「ユリちゃんは、その身に神様を降ろす事が出来るの」

「あー、なるほど」

「なんだ、何も説明してなかったんかい。ま、そういう訳だから、あとは頼んだで」


そう言うとユリは瞑想を始めた、


と思ったら割とすぐに目を開けたが、その表情は先ほどとは完全に別人だ。

なんとなく愛嬌のあった顔が、完全に無の表情になっている。


「来ましたか、まずは、感謝を」

「あ、ど、どうも」

(神様来た?まじ?)

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