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138.ゴーレム

空洞内を歩いていると、急に異音が聞こえて来た。


各々は警戒し、戦闘態勢を取り周囲に一層気を配ると、岩がゴロゴロと転がって来て、ママル達の前方10メートル程手前で停止する。


続けて、次々とその岩にぶつかる様に、新たな岩が転がって来る。

その軌道から見るに、明らかに自然に転がっているものではない。


「な、なんだありゃ…」


皆が構えつつ岩を見つめていると、

それぞれが人の様な形に集まり起き上がる。

4メートル程の巨体が3体並んだが、頭部は無く、どこを見ているのかも解らない。


「ご、ゴーレム?かな?」

「…なんだそれは?」

「え、えっと、説明がムズイんだけど、アレ見たまんま」

「危険なのか?」

「解んない…えっと、≪アプライ:鑑定≫」


●岩石:数種類の鉱物が混ざっている。



「は?」

「おい、何が解った?!」

「いや、何も、岩、としか…」

「顔もないし、私もモンスターかどうかとか解らないわ…。何か、魔法が掛かっているのは確かなんだけど…、どうしましょう…」


すると、3体のゴーレム(仮)は体をこちらへ向けた。

そして一番奥に居る奴が、右の拳に当たる部位の岩を構える。


「くそっ!結局やんのかよ!」


ゴーレムが構えた拳は、さながらロケットパンチの様に飛び出した。


だが、ユリの理障壁が、丁度U字を描く様に高速で次々と展開され、

放たれた岩は障壁の軌道に添うように向きを変え、ゴーレム達の方へ返り一体に直撃した。


「すげーっ!」

「…折角だ、ここはわしに任せとくれ」

「いや、流石に皆でやった方が手っ取り早いし安全…」

「…わしもやれるという所を、お主にも、皆にも見せたい。相手がただの岩であれば、加減の必要もないしの。丁度よい」

「でもっ」


話していると、一体がこちらへ向かって歩き出した。


上げた右足を防ぐように障壁が現れ、バランスを崩す。

重心を整えるため、ズラそうとした左足の先にも即座に障壁が現れ、ゴーレムは転倒した。


「ママルさん、任せてみましょう」

「……もし怪我でもしちゃったら…」

「そしたら、ポーション出してくれるんですよね?」

「ま、まぁ…」

「ユリちゃん!カッコイイわよ!」


「ふふん。まぁ、見ておれ…」


ゴーレム達は、次々と転がされて行く。


そこからは、ハッキリ言って一方的だ。

起き上がろうと上半身を上げようとすると、障壁が阻む。

手足すら置きたい位置に置けず、ゴーレム達は寝かされっぱなしだ。


寝たままの姿勢から放たれる、向こうの遠距離攻撃は全てUターンさせ、

隙を見て放たれる魔弾によって、端から順に砕けたり、接続部が外れたりして行く。


(ユリちゃん、圧倒的じゃないか、てか、戦い方やば、やられたらストレス半端なさそう。森で動物とかと戦ってるのは何度か見たけど、人とか、二足歩行する奴相手だとこうなるのか…)



すると、ゴーレム達は自らバラバラになった、

そして3体は合体するように、体と、6本の足だけがある1体へと変化する。


だが、即座に魔弾の連射で、右側にある2本の足を打ち抜く。

関節にあたる接続部を的確に狙ったため足先がはずれ、ゴーレムはまた転倒した。


「魔弾と理障壁だけでこんな、てか、こんな連射して魔力持つのかな…」

「こうなると持久戦ですね。全ての岩が砕かれるか、魔力が切れるか…」

「ユリちゃんガンバって~~!!」


残る岩が少なくなってきた時、今度はただ岩が並んでいる様な形状へと組み替えられる。


「な、なんだ?」

「何か仕掛けてきますね」

「ユリちゃん!ファイト~!!」


すると、何度か見たロケットパンチの要領でか、複数の岩が同時に発射された。

ユリはそれを飛んで躱す。


ママル達に飛んで来た流れ弾は、テフラが迎撃し破壊した。

他に周囲に散らばった岩は、ユリが即座に破壊して周る。



(っ……!右の脛を掠った…、いたた…、血が出とる気がする…、見ない様にしておこう。だが、これでもう残る岩は…2、4、5個!!)


「≪魔弾≫!!!」

ドドドドドドドドドドドドドドッ!!



ゴーレムを形成していた全ての岩は砕かれた。


「やったあ!ユリちゃん凄いわ!!」

「おー…、やったね、お疲れ」

そう言ってママルはマジックポーションを差し出した。


それを一気に飲み干すと、ユリは満足げに胸を張る。

「な!だので、あまり心配するな!」

「確かに、一般人より全然強いの忘れてたわ」

「待ってください!まだ!」


テフラの視線の先を見ると、砕かれた岩が次々と転がり、寄り集まって来ている。


「くっ!!ま、まだ…」

「…まじか。…てかさ、ユリちゃん、アレ使って良いよ」

「………だが」

「俺が閻魔王スキル使ったら結局同じ事だし、1人でやるんでしょ?」

「まぁ……そうだな……」


そう言って、ユリは胸元からお守りを取り出し握る。

自分に与えられたスキルだ。当然効果は解る。

だが、実際に初めて使う時と言うのは、少し緊張する。


「すまんなママル……≪羅刹胎慟(らせつたいどう)等活(とうかつ)≫!」


ユリはママルから受け渡される様に、巨大な呪力を纏った。

呪術は無生物には効かない。

だが、この時の呪いの対象はママルで、その効果によってユリの力が飛躍的に上がるのだ。


(……纏ってみて解る…。呪力。嫌な力だで…、だが、ママルの事がより解った気がして、少し嬉しい)


両手を構え、蠢く岩の破片が集まる場所に狙いを定めた。


「≪等活・魔孔砲(まこうほう)≫!」


放たれた魔力の一撃は、巨大なビーム砲のように突き抜け、

岩々を粉々に粉砕し、そのまま壁を深く抉った。

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