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137.急転

明朝、早速一行はまた歩き出した。

ママルは昨晩、寝れなそうだと思っていた反面、ちゃんとグッスリ寝た。

やはり寒い中温まると言うのは、それだけで眠気が強くなるんだなと改めて思った。


暫く歩くと、遂には大きな山にぶち当たる。

これを迂回しようとすると、一体どれ程の距離を歩かなければいけないのか解ったものでは無い。


「登るかぁ…」

「…だな…、わしの理障壁とか使って、うまい事一気に登ってみよう」


もろもろ話合った後、ユリはテフラが背負い、メイリーには一旦潜って貰う事にした。


「空中に行っても、影とか大丈夫なのかな、切れたりしない?」

「多分、大丈夫だと思うわ」

「影や闇がなくなると言う事はありえんだろ。例えば服の内側だって影になっとるしな」

「あぁ、ま、そっか」


「メイリーさん、ママルさんに、魔力の糸付けておいてみて下さいよ、ヴェントで戦った時に、敵にやってたやつ」

「あ!!そうね!!出来るかも!!」


他人の亜空間の中と外とで繋がるならば、自分の亜空間と外とでも繋がる筈だ。

少し試した結果、細かい伝達は流石に難しかったが、

例えば出て来てくれ、とか、今から出る程度の簡単な合図なら送れそうだと解った。



それから3人は、ユリの理障壁を順に伝う様にして、山肌を越えていく。

「メイリーさん嬉しそうでしたね」

「出来るだけ一緒にいたいって言ってましたからね、うまく行ってよかったです」

「う、うむ…それにしても…、流石に、怖いのだが…。高いと、風も強くなって来とるし」


「上空から落下して来たペンタスも受け止められたんでしょ?ユリちゃんなら絶対大丈夫だって」

実際この案は以前ママルが話した空中移動そのものだが、

ペンタス救出の実績でもって、もし空中での着地にミスってもなんとかなると判断した。


「いざとなったら、この身に変えてでも守りますよ」

「う…うむ。その、あんがとな」


数回のジャンプを経て、いよいよ高度も上がり、

吹雪によって視界も悪くなってきた頃。ママルが声を上げた。


「ちょっ…、待って!何か…」

「どうした?」

「……………何か、違和感が」

「山にですか?」

「はい…、ちょっと、一回待ってて下さい、行って来るので」


そう言うなり、ママルは目の前の山肌に向かって飛び出した。

殆ど垂直とも言える岩壁に突っ込んでいくと、

ママルの姿はその壁に吸い込まれるようにして消えた。


「おい!ママル!どうした!!」

「ママルさん?!聞こえますか!!」

2人が大声を上げるが、返事がない。


「おい!ママル!!聞こえとらんのか?!」

「ど、どうしましょう…」



すると、岩壁からママルの頭だけが生えるかの様に、にゅっと出て来た。



「うおっ!」


「あ、やっぱこっちからの声は届いてなかったのか、ちょっと、一旦こっち来て。

俺付近の壁は見えてるだけで、何て言うか、無いから」

「わ、かりました」


テフラは壁にぶち当たるのに備えながら、そっと飛び出すと、

結界を通り抜ける時特有の、妙な感触を感じた後、着地した。


「な、なんだこれは!!」


3人の前には、巨大な空洞が広がっていた。

点在するキノコの様な植物が、薄っすらと中を照らしてはいるが、

正面、奥の方向は暗闇に染まっていて、どこまで続いているのか解らない。


「この山って、奥行どのくらいだったっけ?」

「わからんな…」

「確認して来ますか?」


「うむ…いや、外は吹雪だ、困難極まる。このまま進んでみようではないか…」

「だね、なんかちょっと怖いけど、と、メイリーさん呼ぼう」


テフラはその背からユリを降ろし、

ママルは左小指に付けられたメイリーの糸を指で弾くと、

背後からメイリーがヌルっと姿を現した。


「わーい!うまく行ったわね!また直ぐに会えて嬉しいわ!」

そんな呑気な事を言いながら、すぐさまママルを抱えようとして、

大きい荷物を背負っているママルには迷惑かもと思いなおし、テフラに抱き着いた。


「あの…流石に歩きづらいんですが…」

「だって、寒いんだもの…」

「だったら潜っておってもよいと言うに」

「それはもっと嫌~!」



そんなやり取りを聞いて、ママルはこんな環境とは裏腹に、平和だなぁ。なんて思った。


「ここは?もうお山を越えたのかしら?」

「いや、ここは山の中、と言うか、内部だね」

「だな、おそらく結界の内側だろう。視覚の隠蔽と、内から外への音等の遮断、他にもかかっとるかもしれんが…」


「って事は、それをかけた人がいるって事だよね」

「だな。まぁ、何かしらの手段で常駐化させたとしたら、今いるかどうかは定かでは無いが」

「警戒して進みましょう」


ママルがランタンを取り出し、先頭を歩き出した。


「お主、こういう時は小さいから便利だのう」

「…な、何さ……」

「いっ、いや、馬鹿にしたのではなく。お主の体が視界を遮らないから…」

「なるほど…」


「ママルさん、小さいのそんなに気にしてるんですか?可愛いのに」

「っ!…い、いや、まぁ、前にユリちゃんにチビって言われた時、

なんかやたら腹立ったからなぁ、ただの言い方なのかもしれないけど」

「お!お主はわしにガキと言った!!似たようなもんだろ!」


「……ごめん」

「…す、すまんかったな」


「ふふ、言葉一つで、争いが起こったりもしますからね、気を付けましょう」

「…だな、だ、だが、何か不満があったら、ちゃんと言うのだぞ…、こ、言葉には気を付けてな」


「……私は、大丈夫かしら…?何か、変じゃない?」

「うぅむ…、変わっとるのは確かだが、それはお主のよい所だと思うで」

「そ…そうなの?」


「そうですね、私もそう思います」

「解ります。なんか安心するわ」

「え、えへへ…、へへへへ」


やたらとモジモジしているメイリーを後尾に、一行は暫く歩いた。



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